〆切１０分前！

てつや　(2002/03/24(Sun) 03:57:52)

「一体どうすりゃいいんだ・・・」

新人ミステリー作家・横山清流の新作書き下ろしの〆切日、
編集者・雪村広大は横山の元へ向かう途中、一本の電話を入れた。
「あ、先生、今日〆切日ですけれども原稿の方は大丈夫ですか？」
「ええ、大丈夫ですよ。ただ今日、突然の用事で外出しなくてはいけなくなったので
アパートの友人に原稿を預けてるんです。悪いけどその友人の所に行ってもらえますか？」
「はい、分かりました。で、その友人というのは？」
「それなんですが、ここで一つゲームをしましょう」
電話はそこで切れ、着信音と共に一通のメールが届いた。

「理＝10、数＝12、英＝６、国＝16、社＝38
　友人の名は、米山−村上です。
　ミステリーの編集者ならば、これくらい解いて下さいよ」

とりあえずアパートに着いて住人の名前を確かめてみる。

101号室・秋山、102号室・中田、103号室・原西、104号室・香坂
201号室・横山、202号室・中村、203号室・沖田、204号室・京本

この中から横山を除いた７人の内の一人、ということなのだが
この暗号の意味が全くわからない・・・
出版社に持っていく時間を考えると、〆切まではあと10分・・・
雪村は一人呟いた。

「一体どうすりゃいいんだ・・・」


「一体どうすりゃいいんだ・・・」が問題とすると、

現実なら、暗号など解かなくても、一軒づつ尋ねて確認すれば良いと思います。
８件程度なら、それの方が早いかな、運が良ければ１件目で当たるかもしれませんし、それに確実であるという点からもいい。



暗号って、授業の頭文字みたいだけど･･･
どうゆうことなんでしょうねぇ？


トゥルルル、トゥルルル、携帯の着信音が鳴る。
「もしもし、先生ですか？」
「あ、一つ言い忘れてたけど、その友人にはどうやって暗号を解いたかを
　聞かないと、原稿を渡さないように言ってるから、じゃあ」
「ちょっと待ってください、ヒントをお願いできませんか！？」
「ヒント？仕方ないなあ・・・理＝10って送ったけど、
　理＝48でもあるんだよ。それじゃあ頑張って」プツッ・・・

理＝10でもあり、理＝48でもある・・・？


横山からメールが届いた。
「すいません、理＝10は誤りで、理＝18です」
ふざけやがって・・・新人のくせに・・・


まったくわからないξ
理は18であり、48でもあるって事ですか？？


時間まであと８分。
こんな出たての新人に頭を下げるなんてまっぴらだが、背に腹は変えられない。
もう一度、横山の元へ電話を掛ける。
「先生、もういいかげん教えていただけませんか？」
「分からないと匙を投げるなら、別の出版社に原稿を持っていくまでですよ」
・・・ちょっと大きな新人賞を取ったからといっていい気になりやがって・・・
「分からないんですよ、理は18であり、48でもあるって事ですか？」
「ええ、そういう事になりますね。国も二通り考えられるんですが、
　両方とも16になるんですよ」
「もう少しヒントをいただけませんか、お願いします！」
「仕方ないですねえ・・・それじゃあ、メールで送りますよ」

その後すぐ送られてきたメールの内容とは以下の通り。
「もしかしたあなたが漢字を読めないかもしれないので、読み仮名をふりますよ。
　理（り）・数（すう）・英（えい）・国（こく）・社（しゃ）
　友人の名前は米山（よねやま）−村上（むらかみ）
　ちなみにうちの住民の読み方は、
　秋山（あきやま）・中田（なかた）・原西（はらにし）・香坂（こうさか）
　横山（よこやま）・中村（なかむら）・沖田（おきた）・京本（きょうもと）」

・・・ふざけるなっ！！



「くに」も「こく」も１６なんですよね？
赤は３になります？


なりますね。赤は３でございます。


赤が３ってことは、黒は５１ですか？
これが正しければ解けます。


その通りです、たかゆきさん。
そろそろみなさん分かってきたようなので、
どなたかバチッと回答を上げて編集者を助けてあげて下さい。


解き方はわかったのですが、誰が持ってるかわかりません。
なので、暗号の解き方だけ書きます。
※表１
　１２３４５６７８９０
１あかさたなはまやらわ
２いきしちにひみ　り
３うくすつぬふむゆる
４えけせてねへめ　れ
５おこそとのほもよろを

上記の表を参照に、縦軸×横軸をします。
たとえば、理は９×２＝１８というわけです。
理は「り」以外にも、「ことわり」とよむので、１０＋２０＋０＋１８＝４８です。
しかし、どうやっても誰にも当てはまりません。
米山−村上は２９のはずですが、誰も２９の人はいません。
秋山＝２０、中田＝１１、原西＝３１、香坂＝１８、横山＝６５（本人が持ってる可能性があるので）、中村＝３７、沖田＝１３、京本＝１０２となります。
解き方が違うのか、計算ミスなのか、考え方からして違うのかはわかりませんが、他の人にゆだねます。誰かかたきをとってくれ！！


雪村は横山が送ってきた読み仮名のメールを見てひらめいた。
そして、手持ちのメモ帳に考えた表を大急ぎで書きつけた。

　１２３４５６７８９０
１あかさたなはまやらわ
２いきしちにひみ　り
３うくすつぬふむゆる
４えけせてねへめ　れ
５おこそとのほもよろを

理の読み仮名は「ことわり」もある。これなら、理＝18も48も満たす。
よし、これに違いない！これなら米山−村上は・・・29！
この住民の中から29の人間を探すんだ！

・・・しかし、どう計算しても29にあてはまる人間がいない・・・

計算はミスしていないはず。横山が間違ってないとすると・・・
俺の解き方にミスがあったのか・・・？

〆切りまではあと５分。


２×９＝１８!!

香坂さん・・・かな？

これで当たったらおいしいとこ持って行き過ぎ!?


素通人さん鋭い！！そこまでは気がつかなかった！！
他の推理でもし素通人さんの推理がかなりのヒントになりました。
コンビでも組みますか？（笑


ぐはっ
あたしの推理って単純ですから(汗)
結局ヒントはいつもいいトコまで行ってるのに答えが出ない(汗)
こんなあたしでよかったらコンビ組みましょう(^-^)


そうか、２×９＝１８！香坂か！

雪村は香坂の部屋のチャイムを鳴らす。
「はい、どなたですか？」
「丸川出版の雪村です。横山先生の原稿を受け取りに来たのですが」
「横山？ああうちのマンションの。原稿って何？知らないけど」
「横山さんからもらった暗号を解くと、香坂さんになったんですが・・・」
「よく分からないなあ。残念だけど、他当たってくれない？」
バタン、と閉まるドアの音が空しく響く。

〆切りまではあと４分・・・


中村さんじゃないでしょうか？
米山−村上は、２９
私のやり方だと、中村＝２９に。
　　１２３４５６７８９０
１あかさたなはまやらわ
２いきしちにひみ　り
３うくすつぬふむゆる
４えけせてねへめ　れ
５おこそとのほもよろを
の、縦と横の数をたしたら、
そうなったんですが・・・。
どうでしょうかね？


雪村はふと、考えた。

　１２３４５６７８９０
１あかさたなはまやらわ
２いきしちにひみ　り
３うくすつぬふむゆる
４えけせてねへめ　れ
５おこそとのほもよろを

この縦横の数を足すと考えると・・・
な（５＋１）か（２＋１）む（７＋３）ら（９＋１）で、足すと29。

中村が正解か・・・？いや、それなら第一、理＝18にならない・・・

時間がない・・・


２×９＝１８で違ってたけど、何かいい感じの考え方だと思いました。
２＋９＝１１なら中田さんが持ってると言うことになりますけど、どうでしょう？


さっきは２×９＝18で間違っていたが、２＋９＝11なら中田になる・・・
どうもしっくりいかない気がするが、一応あたってみるか・・・
ピンポーン・・・ピンポーン・・・
チャイムを鳴らしても返事がない。やはり違ったのか・・・

　１２３４５６７８９０
１あかさたなはまやらわ
２いきしちにひみ　り
３うくすつぬふむゆる
４えけせてねへめ　れ
５おこそとのほもよろを

俺が考えたこの表そのものに問題があるのだろうか・・・
横山の性格を考えると、どこかに見えないヒントを出して
ほくそえんでいる気がするのだが・・・見当がつかない。


ヒ、ヒントを・・・。
難しい。（Т＿Т）


もう、恥も外聞もない。時間がないんだ。
俺には守るべき家庭があり、そのためにこんな下らない小僧のパズルで
職を失うわけにはいかないんだ・・・
「もしもし、先生、もう終わりにしていただけませんか・・・
　こんな難しい暗号は、私には解けません・・・」
「さっきから言ってるだろう、解けなければ他の出版社に持っていくと」
その時、自分の頭の中が真っ白になり、思いも寄らない感情に身体が大きく震えた。
「ふざけんな！こっちは仕事で付き合ってやってるんだ！
　ぽっと出の新人が大きな口を叩くんじゃねえ！！」
「へえ、ついに本心が出ましたねえ。前に僕の考えたトリックを
　下らないとか陳腐だとか散々けなした時のように」
「まだそんな下んない事を根に持ってんのか・・・！？」
「陳腐な奴が作った暗号なんでしょう？さっさと解いたらどうなんだよ！？」

畜生！！その場で携帯を地面に叩けつけようと振りかぶったその時。

何か不思議な感覚に襲われた。

まさか・・・？

ちょっと見やすくしました

　１２３４５６７８９０
１あかさたなはまやらわ
２いきしちにひみ　り
３うくすつぬふむゆる
４えけせてねへめ　れ
５おこそとのほもよろを

「図表モード」を使うとずれにくくなりますよ。

もしかして、こんな図にはなりませんよね？


                 　１２３４５６７８９
                 １あかさたなはまやら
                 ２いきしちにひみゆり
                 ３うくすつぬふむよる
                 ４えけせてねへめわれ
                 ５おこそとのほもをろ

携帯で同じ様な表を作るとすると、８（やの行）が３までで終わります。
これで考えると、「米山−村上」は24＋20＋8＋7−21＋9＋2＋14で13となるので、
沖田の部屋ではないでしょうか。

雪村はこういう表も考えてみた。

　１２３４５６７８９
１あかさたなはまやら
２いきしちにひみゆり
３うくすつぬふむよる
４えけせてねへめわれ
５おこそとのほもをろ

しかしこれでも、さっきから気にかかっていた社＝38の辻褄が合わないのだ。
それに横山は、一貫した法則性を好む男で、変則的にあいうえお順を入れ替えた
表に基づいた暗号を作るとも考えられない・・・
しかし、その法則には近づいている気はするのだが・・・

発言が入れ替わってしまったようですね。
ちなみに、上では８（やの行）は３で終わると書きましたが、
ゃゅょがあるので、６までありますね。


雪村は握り締めた携帯をまじまじと眺めた。
そうか・・・横山が暗号をメールで送った意味・・・わかった！

急ぎ足で沖田の部屋へ向かい、チャイムを鳴らす。
「はい？」インターホン越しの声。
「丸川出版の雪村ですが」
「ああ、聞いてますよ。ちょっと待ってください」
ドアが開くと、細身の男性が現れた。
「原稿を受け取りに来たのですが・・・」
「ええ、でも横山からは暗号の回答を聞くように、と言われてるのですが・・・」
焦る心を抑え、説明を始めた。
「これは、携帯で文字を入力する時に押す数字の和なんです。
　つまり、社なら３（さ行）のボタンを２回押して「し」
　８（や行）のボタンを４回押して「ゃ」で、３×２＋８×４＝38。
　このようにして、米山−村上は13になるので、13にあてはまる沖田さんが正解です」
「ええ、聞いていた答えと同じです。はい、これが言われている原稿です」
沖田から茶色い紙袋を受け取ると、礼を言い、タクシーを止め「○×印刷所」と告げた。

これで何とか間に合いそうだ・・・時計を見ると時間ギリギリ。
安堵の気持ちで胸が一杯になる。
横山の担当は今回で降ろしてもらおう。これが最初で最後の奴の原稿だ。
と、原稿をチェックする。・・・？200ページの約束が、20ページ足らずで切れている。
まさか、あいつ！！
いそいで横山の元へ電話をかける・・・「電源が入っておりません」

やられた・・・


というわけで、Zさんおめでとうございます。鍵は全編通じて出てきた携帯です。
この問題はヒントや誤答全部含めてストーリーにしてみる、
という考えで作ったものですが、出来れば皆さんの御意見や御感想、お叱りなどを
いただけると嬉しいです。



てつやさん　こんばんは。
今、２９件すべて三回くらい目を通しました。
すごく良い出来じゃないですかー！

当初は１０１〜１０４、２０１〜２０４号室に引っ掛けて
表をずらして計算するのだと思い込んでました。。。

すばらしい！また楽しい問題を期待してます。（＾−＾）



とても良くできたすばらしい問題だと思います。
文章も本物の作家さんみたいに上手だし。
また楽しい問題をお待ちしています（＾−＾）


※　問題中に使用されている人名、地域名、会社名、組織名、製品名、イベントなどは架空のものであり、実在に存在するものを示すものではありません。