連続殺人事件 in S町(後編)
湯歌 (2004/06/04(Fri) 00:06:25)
ガチャリ、とドアを開けて捜査本部へ入ってきたのは例の若い刑事だった。
ドアを閉めるなり、少し大きすぎるくらいの声で持ってきた書類を読み上げ始める。
「5/26に殺害された新 青海(あらた おうみ)の遺留品鑑定結果の詳細が報告されました。
・・・今までの被害者の場合と同様、犯人のものと思われる指紋や毛髪の類は見つかっていません。
が、犯行の方法からみてほぼ同一犯に間違いないそうです。また凶器についてですがこちらのほうも・・・。」
と、ここまで読んでようやく彼は部屋の中の重い空気に気づいた。
「・・・もしかして、もう次の被害者が出ちゃいましたか?」若い刑事は部屋にいる4人の刑事達の誰にともなく聞いた。
「大丈夫だ、まだそんなとこまでは行ってない・・・。」例の中年の刑事が答えた。
「じゃあ、どこまで行ってるんです?」若い刑事は自分の席に着きながら聞いた。
「お前ら不謹慎だぞ・・・。」本部長がいつものように注意したが、口調は重い。
「・・・新しい予告状らしきものが見つかったんだよ。」気づけば中年刑事の口調もいつもより重いものだった。
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十二支の愚者達
笹葉の揺れ始める頃より
お前達わ己が富と成すため
多々の裏切りをおこなったが故
山々の木々わ枯れ川わ穢された。
やや数の減りてから恐れ始めようとも
時わ既に遅し。
また、警幾度我を妨げようとも
正義といふ普遍の怒りは
消えることなきもの故
繰り返されるもの必至也。
字順名日 6/5〜
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「・・・これですか。今回は印刷されたものなんですね。」若い刑事が言った。
「ああ、普通の紙だ。A4サイズの紙だからおそらくはパソコンで印刷されたものだろう・・・。」
「前の予告状と同じように公民館の掲示板に貼ってあったそうだ。」中年刑事が言った。
「最後の『字順名日 6/5〜』っていうのはなんでしょうね・・・?」若い刑事が聞いたが誰も答えるものはいなかった・・・。
「・・・『命日』の変換ミスか?」ようやくそれに答えたのは中年の刑事だった。
「『命日』・・・。ということは、やはりこれは連続殺人の犯行の予告状ということでしょうか・・・?」
今度こそ誰も答えるものはいなかった。聞かなくても誰でもわかることだったな、と若い刑事は少し後悔した。
「・・・この『字順名日 6/5〜』ってのが犯行予告なら、犯行が始まるのが、6/5からってことだろう・・・。
だが、今の人数じゃ残り6人全員に24時間ずっと張り付いてるのは無理だ。」と中年の刑事がこれからのことを話し始めた。
「だが、全員を一箇所にまとめるわけにもいかん。それぞれ仕事もあるし、プライバシーの問題も出てくる。」と本部長も意見を言う。
「それに、6人全員に張り付いてたら犯人は現れませんよ。もう少し僕達の人数がいるなら別ですが、
今の人数で守りに入れば犯人が捕まえられなくなってしまいます。」と若い刑事が言った。
「これ以上被害者を出さないためにも、前回のように情報提供をしてもらって暗号を解くしかないみたいだな・・・。
暗号さえ解ければ犯人の逮捕は一発でいけるはずだ。」
というわけで、今回も犯人の予告状にある暗号から「次の被害者」を探し出してください。なお、被害者になる可能性があるのは次の6人です。
・山下 勇二(やました ゆうじ)
・古川 恵介(ふるかわ けいすけ)
・今井 若菜(いまい わかな)
・斉藤 伸太郎(さいとう しんたろう)
・谷口 真紀子(たにぐち まきこ)
・和久田 幸一(わくた こういち)
※前回と同様にこの問題の中では12時間ほど時間が遅れていると思っていてください。
出題が遅れてしまい申し訳ありませんです。 m(_ _)m
湯歌 (2004/06/04(Fri) 02:22:42)
寝る前にヒントです・・・
「『・・・消えることなきもの故 繰り返されるもの必至也 字順名日』」中年の刑事はもう何度となく予告状を読み返していた。
「『字順名日』ってのは・・・。名前順に殺されるってことか?」と中年の刑事が聞く。
「『命日』の間違いだ、って言ったの先輩ですよ。それに、その推理だと上の長い文がいらなくなっちゃうじゃないですか。」
「いや、こっちの文はカモフラージュってことも有り得るだろ?」
「・・・『平』?」と若い刑事が唐突に言った。
「・・・なんだよ、『たいら』って。」
「その予告状の裏に・・・。」
中年の刑事は、指紋などが付かないようにビニールで包まれた予告状を裏返してみた。
そこには鉛筆で書かれたらしい、うすい文字で「平」と書かれてあった。
「・・・これは、暗号のヒントか?」
「僕は知りませんよそんなこと・・・。」と若い刑事は答える。
「分かってるよそんなことは・・・。」と中年の刑事は言った。
分かりにくいヒントですみません
ちなみに今回の問題でいるものは漢字を読む能力だけです。
では、夜にまた・・・(今も夜ですが
ノシ
ころ (2004/06/04(Fri) 22:50:50)
こんにちは。
なんとなく、見えてくるのは、
次の被害者は「斉藤 伸太郎」。
でどうでしょう。
その後は、谷口、和久田・・・と続きそうです。
湯歌 (2004/06/06(Sun) 17:35:22)
「・・・どうして彼らを殺したんだ?」中年の刑事は取り調べ室のイスに座りながら聞いた。
目の前に机をはさんで座っているのは「斉藤 伸太郎」宅前で捕まえた男・・・「古川 恵介」である。
捕まえてすぐに古川は自分が犯人であるということを自供した。しかし肝心の動機についてはなかなか話そうとしない。
「まさか、動機が無いというわけじゃないだろう?」中年の刑事が再度聞いたが反応は無い。
「・・・刑事さん、あの暗号が解けたんですよね?」ようやく古川が口を開いた。
「ああ、情報提供者の協力のおかげでな。あの暗号を平仮名に直して、繰り返し使ってある文字、
・・・つまり『笹葉の』の『ささ』とか、『多々の』の『たた』が名前の頭文字の人物をその順番に殺していく、
っていう意味だったんだろ?」と中年の刑事は答えた。
「・・・ええ、その通りです。」古川が言った。
「それが動機と関係があるのか?」と中年の刑事が聞く。
「多少は関係ありますよ。ところで刑事さん・・・」古川が言った。
「ボールペンと紙を貸してもらえませんか?」
そして古川が紙に書いたのはこんな文章だった。
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はんたねいをおしきうってかいしはつをす
すめたとためしらぜんうがうしなわれたと
められなかったたわたつしもどみうざいだ
各行に2つ
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「おい、なんだこれは?これが動機なのか?」中年の刑事が聞く。
「ええ。今までの暗号が解けたなら解けるはずですよ。」と古川は答えた。
「・・・解くまで自分からはしゃべらんというわけか?ちょっと待ってろ・・・。」
そういうと中年の刑事は取調べ室から出た。そして外で待っていた若い刑事に言う。
「暗号を解くための情報提供を求めてくる。そのあいだ奴を見張ってろ・・・。」
「分かりました。」と答えながら。若い刑事は取調べ室へ入っていった。
※回答が遅れ大変失礼いたしました m(_ _)m
お詫びといってはなんですが追加問題です。この暗号を解いて動機を答えてください・・・。
今昔亭 (2004/06/06(Sun) 18:33:38)
どーも。
各行から二つ「あれ」を…
「反対を押し切って開発を進めたため自然が失われた
止められなかった私も同罪だ」
…が動機。
このシリーズ、どれもアイデアが素晴らしいので感心しています。
湯歌 (2004/06/06(Sun) 19:14:52)
「まさか『十二支』のうち今まで殺された6人の分、『ね』『うし』『とら』『う』『たつ』『み』
を各行から2つずつ順番に取っ払って読むんだとはな・・・。気づかなかったぜ。」
独り言のようにつぶやきながら、中年の刑事は廊下を戻ってきていた。
そして取り調べ室のドアを開けようとした、そのとき
「うわぁ!」・・・若い刑事の叫び声だ。
中年の刑事はあわててドアを開いた。
そこには、のどにボールペンを突き立てて床に倒れた古川恵介の体があった。
「先輩!か、彼がいきなり・・・!」
「・・・もっと早く気づくべきだったな。」中年の刑事は目を閉じながら静かに言った。
「な、なにがですか?」
「こいつは最初から犯行のターゲットの数に自分も入れてただろ?ターゲットのことを『十二支』って呼んだり、
2回目の犯行予告では自分の名前の頭文字も2回繰り返してたり、この暗号でも『私も同罪だ』ってよ・・・。」
「つ、つまり最初から自殺するつもりで・・・?」
「自然が破壊されることが許せず、その決定を止められなかった自分も許せなかったんだろう。
この開発のおかげで幸せになれる奴だってたくさんいるのにな・・・。」
S町連続殺人事件は解決した。容疑者自供後の自殺によって・・・。
前編・後編を通して解いてくださったみなさん、考えてくださったみなさんありがとうございました。
実は最初からこんなラストしか考えてませんでした・・・。
またしばらくしたら問題を出したいと思いますので、どうぞよろしくお願いします。 m(_ _)m
では、済みです・・・。
※ 問題中に使用されている人名、地域名、会社名、組織名、製品名、イベントなどは架空のものであり、実在に存在するものを示すものではありません。