雷神橋問題

線分ft　(2004/11/05(Fri) 20:03:40)

初めまして、線分ftと申します。
早速、簡単な問題ですがどうぞ。

―――
問題
草木は枯れ大空は鈍く、更には前日の嵐で凄まじい光景を
その黒々と焼け焦げた物体は、変な話だが風景として成立させているように見えた。
静かな秋の宵に血腥い気を持ってきた相手は、まず最初にその現場写真を私に見せた。
「もう少し早朝に撮るべきだったな、緊張と壮絶感が出た」
「写真の批評はどうでも良いです。何か変なところはないですか」
「つまらん奴だな。変な所と言われてもまだ説明もされておらんのに……。
強いて言えば、ガソリンを運んだ容器が無いから他殺かな」
「そうですね、ただガソリンではなくてベンジンでしたが」
「賢明だな、アシがつきにくいだろう」
「犯人に感心してどうします。実際まだ分かりませんけど」
「そらみろ、それで一体どんな事件なんだ」
「はいはい……その前に砂糖ないですか」
珈琲を口に含んで苦そうに顔を顰めていた。
家に有るわけが無いだろうと言うと更に顔を顰めてカップを置いた。
「その写真はB市の雷神橋です。死体はI月9日の午前四時頃に家出少年Sが発見しました」
「ああ、あの雷神が落ちた所に宗教団体が架けたとかいう胡散臭い……」
「はい、その通りです。そのお陰で雷神に殺されたなんて言い出す関係者もいる始末です」
「現場の状況は？」
「それが、ご覧の通り前日の嵐で滅茶苦茶でして……
犯人に繋がりそうな物は残っていませんでした」
「ベンジンだと分かったのは？」
「被害者のセーターの糸屑が残っていたので、そこから」
「容器は無いと言ったけど、川底は漁った？」
「無論です。長靴一個と古傘五本、空き缶七個、雑誌十一冊が収穫です」
「ご苦労様でした……。それで、被害者は？」
「これが真っ黒にこんがり焼けていたものですから特定に苦労しましたよ……。
大手紡績会社社長明日部氏の夫人です」
「ああ、あのえげつなさでは右に出る者のないMU紡の……」
「そうです。しかも家庭内事情が面倒でして」
そう言いながら一枚の紙を取り出した。
……
・被害者
明日部　燈子(あすかべとうこ)　48歳
明日部氏夫人。
情熱的な性格で、嫉妬深い。夫や子供を溺愛していた。
朽苗霧香に酷く敵意を抱いていた。

・容疑者
朽苗　霧香(くちなわきりか)　36歳
明日部家の家庭教師。
比較的沈着冷静。明日部氏や子供から信頼を得ている。
特に明日部氏には唯一影響を与えられる人物。
燈子夫人が死ねば、明日部氏と結婚できる。
自室より大量のベンジンの空き瓶が発見された。

明日部上也(あすべかみや)　50歳
某大手紡績会社社長。富豪。
冷徹な企業人だったが、朽苗霧香の影響で温情的に。
夫人の熱烈な愛情に辟易していたようだ。
夫人が死ねば、朽苗霧香と結婚できる。
……
「ふーん……」
「どう思います？」
「普通に考えれば朽苗霧香が犯人で確定だろうな、動機も一番強い」
「でしょう？　奴が犯人に違い無いんです」
「じゃぁ、何しに来たの、君は」
「それが、朽苗霧香には現場不在証明が」
「そう来なくちゃな」
「喜ばないでくださいよ」
そう言ってもう一枚の紙を取り出した。
……
20:00　明日部氏、朽苗嬢を伴ってTH店のパーティーに参加
　　　(TH店は雷神橋より上流に徒歩約十分)
22:30　朽苗嬢、携帯で燈子夫人に呼び出され席を離れる
22:55　朽苗嬢、パーティーに復帰　
23:00　燈子夫人、燃え始める
0：00　明日部氏、席を離れる
0：30　明日部氏、パーティに復帰
……
「……なんで燈子夫人が燃え始めた時間が分かった？」
「腕時計が熱で壊れたようです」
「時間がずれていた可能性は？」
「時間に厳しかったそうなので、まず無いでしょう」
「パーティの時間の方は？」
「防犯カメラの映像です」
「何故に死体が朝まで発見されなかった？」
「あの辺りなら、その日のうちに帰る人間は十時頃には帰ります」
「車は？」
「朽苗嬢は免許を持っていません。タクシーもいません」
「船は？」
「ありません。あらゆる交通機関を当たりましたが、全て不発です」
「ふむ……」
「とりあえず、分かっている限りの事は出しましたよ
さぁ、この事件を解いてください」

（勿論、人物・団体名等は全てフィクションです。）
―――

最初に「初めまして」なんて言いましたが
実は前に違うHNで来ていた者だったりします。
久しぶりの出題なのですが、誰だか分かりますか？
問題のついでに、余興にでも当ててみてください。
(でも、覚えていらっしゃる方がおられるかどうか……
(それ以前に、あの頃の方がおられるかどうか……＾＾；)


容疑者二人が共犯というなら、話は簡単です。?@霧香、婦人を燃やす。?A霧香、パーティーに復帰。?B上也、死体の時計の時刻を変える。?C上也、パーティーに復帰。?Dパーティー終了後、上也、霧香の部屋に、ベンジンのビンを置く。・・・・僕の推理だと、二人は、共犯だったが、上矢は、霧香を裏切ったということでどうでしょう。　　


こんばんは。
私はまだ常連になって浅いので、きっと初めましてだと思います（＾＾

ところで問題の方ですが、某有名小説で似たような話を見たことありますが
それとは違う答えなんでしょうか？
もし同じだとしたら、被害者は自殺かと・・・

朽苗霧香を犯人に仕立てるため、ベンジンの瓶を彼女の部屋に置き、
中身は川底の長靴or空き缶に入れていった、もしくは
最初からセーターに染みこませておいたかしたのでしょう。
しかし、燃えるまでにかかる時間の計算を間違えたため、
朽苗霧香にアリバイができてしまった、とか。


上也が、腕時計の時間を変えたら、犯行は、可能ですね。


普通に考えます。別解狙いで。（苦笑）
朽苗の単独犯だとして、（この時点で無理っぽい）パーティを抜けた22：30に燈子を燃やす以外の方法で殺害。（無難なのは絞殺だと思う）その後時計をずらし、アリバイ＆絞殺の跡をわかりにくくするために燃やす。
これでどうでしょう？


こう考えてみました

これは朽苗の単独犯行、ただし明日部氏は故意にある情報を刑事に伝えなかった。
まず犯行時刻だが実は23:00ちょうどではなく５分ほど前だった。というのは明日部夫人はいつも自分の腕時計を５分程進めていた為。彼女は時間に厳しかったという。ということは時間に遅れることを嫌ったいたと考えられ自分の時計をわざと進めておくことで時間に余裕を持たせたかったのであろう。これは親しい人でもなかなかわかりづらいことがらであり捜査上には浮かんでこなかった。
この５分進んだ時計により空白の５分間、つまりパーティー会場までに戻る余裕が生まれたのである。（理想としては１５分だがさすがに１５分も進める人はいないと思われる）

ーーーーーー

これだけ書いておいて何だけど無理っぽいですね、特にパーティー用の格好で走り回ったりするのは…

ただ夫人が火を付けられたとき意識があったかなかったかで大きく変わりますね。もし意識が無かったらベンジンを導火線代わりにすれば少しは時間が稼げると思われます。


あ〜、あと事故死の可能性もありますね。夫人はドレスの汚れを落とす為に秘書にベンジンを持ってこさせた後、偶然雷に打たれて死亡してしまった、という。

乱発になってしまいましたがこんな感じでしょうか？




犯人があらかじめ被害者の時計と同型のものを用意しておいて、被害者を眠らせる。
あとは腕時計を用意しておいたものと付け替えて、焼く。
薬品については木で作った容器に入れといて、一緒に焼くなり川に流すなり。

ってのは駄目ですか？


素晴らしい、素晴らしいです。
まさか約一日で、用意した罠全てと正解が出るとは思ってもいませんでした。
アクセルさん、Vegaさん、SHOさん、たまりんどさん、03sさん、回答有難うございます。
そしてVegaさん正解です。おめでとうございます。

さて、解答はVegaさんが書かれた通りなので
その他の可能性が何故有り得ないのかを述べれば十分かと思います。
まず時計についてですが、時刻を示したまま壊れて、その上焼け残るのは
予想できないのではないでしょうか。
なので、腕時計をズラしておいて焼くアリバイトリックを用いるのは不自然。
もう一つ、夫人が焼け死ぬのを確認せずに逃げる
もしくは放置しておくのは、すぐ下に川が流れているわけですし
万が一、火が消えたなら犯人の身の危険ですから不自然です。
いや、私も今さっき思ったのですが
そもそも自殺以外であった場合川に飛び込まなかったら不自然ですね＾＾；。
（自殺でも川に飛び込まなかったのは凄い事ですが……）。
事故については、富豪の夫人がそんな時間に車にも乗っていないのは不自然ですね。
以上の事で、自殺以外の可能性は全て消せたかと思います。

Vegaさんが「某有名小説」と書かれておられますが
実は、この問題はトリックと人名、その他細々した事以外は
登場人物の相互関係も、シュチュエーションも全て
サー･アーサー･コナン･ドイルの名作「ソア橋事件」そのままなのです。
更に、題名の「雷神橋問題」は
「ソア橋事件」の原題「The Problem of Thor Brige」を直訳しただけ。
そう、下手すると題名を見ただけで犯人を当てられてしまうトンデモナイ問題でした。
皆さん、余りにそのまま過ぎるので罠だと思われて
更に裏をかかれて敢えて自殺を避けられたように見受けられますが
そうだとしたら、思わぬ効果でとても嬉しいです（根性悪な……）。

−−−
後日談：
事件解決の報を持ってやってきた相手と自分とに珈琲を淹れて
椅子に座りながら、ふと、呟いた。
「"The Problem of Thor Brige"……か」
「トール・ブリッジ……？」
「トールは北欧神話の雷神の名前。
"The Problem of Thor Brige"は『ソア橋事件』だ」
「ああ、ドイルの……そういえば、今回の事件は『ソア橋』そのままでしたね」
「夫人はそれほど凝ったトリックを創れる性質ではなさそうだし
おそらく『ソア橋』を教科書にしたのだろうさ……」
「成程……しかし、最後が富豪と家庭教師のハッピーエンドとは
まさかここまで教科書通りに行くとは思わなかったでしょうね」
「ハッピーエンドか……いや、とんでもないバッドエンドかも知れない」
「……何がですか？」
「夫人の趣味が読書だったとしても、『ソア橋』なんて読むとは思えない」
「それは、そうですが……」
「しかし、夫人は子供を溺愛していた。授業内容も子供から聞き出すに違いない。
もしも授業で朽苗嬢が「ソア橋」を子供に薦めていたら、夫人も読むだろう
ベンジンだって、家庭の危険な物として授業で話せば……
しかし、証拠は何もない、有ってもそんな気ではなかったと言われれば終わりだ」
「……」
「自分自身に火をつけるなんて残酷な自殺をさせられた夫人の阿鼻叫喚が
朽苗嬢を取り巻いている……そんな気がするのだよ……
次は明日部氏が死ななければ良いがね……」
相手は珈琲を一口飲んで、本当に、心の底から苦そうに顔をしかめた。
−−−

そういえば、私の前HNですが
言ってもご存知の方が居られなさそうなので
また今度の機会にでも……


こんばんは（＾＾

やはりホームズでしたか。
橋の名前まで倣っていたのは気づきませんでしたが、
登場人物の関係と状況がすごく似てると思ったんですよ〜。

確か原作は銃を使っての自殺でしたね。
でも、現代の捜査だと川をさらってみるのは基本ですから
その辺から焼死に変えたのかなと思いました。

また楽しい問題お願いしま〜す（＾＾ﾉｼ


※　問題中に使用されている人名、地域名、会社名、組織名、製品名、イベントなどは架空のものであり、実在に存在するものを示すものではありません。