門脇が言う
サイン (2005/03/29(Tue) 18:45:57)
この話は架空です。
「門脇さん、これ、あずかってきました。」
目の前に突如現れたものは、浅田の手で吊り下げられた、何処にでもあるような何ら変哲のない白い封筒であった。
「誰から?」
「駅前のおやっさんからです。」
「へぇ、珍しい事もあるもんだ。あの、おやっさんが…ねぇ。」
「ええ、自分でもペンを持ったのは何年ぶりかだ…って言ってましたよ。」
「どれどれ、何か良いネタでも仕入れたのかな…?」
門脇は机の引き出しからハサミを取り出すと封を開いた。その中には三つ折りにされた、やはり、有り触れた白い便箋が1枚入っているだけだ。
「えーっと、なになに…。」
よう、旦那、元気かい?
柄にもなく手紙なんぞを書いてみたんだが、勿論、それなりの意味があってのことだ。
実は、こないだ旦那が探してた奴のネタを仕入れたんだが、どうやら落ち着いたガサがあるようなんだ。奴さん、あの事件から半年も無事だったもんで、のうのうと暮らしてるようだぜ。
ところで、話が変わっちまうが、俺が大の温泉好きって事は旦那も知ってるとおりだが、久々に草津か熱海あたりへ骨休みに行こうと思ってる。…で、昨日、インターネットでなかなか感じの良い温泉旅館を見付けたんだよ。ところが、そこがちょっと高いんだよなぁ。
そこで、だ。旦那、俺といっちょ勝負しねぇかい?
旦那が探してた奴の場所を下に書くが、無い知恵を絞ってクイズにしてみた。このクイズが解けて、奴さんを逮捕したときにゃ、ネタ代は、いつもの半分でいい。もし、解けなかった日にゃ、いつもの倍欲しいんだが、…どうよ?
いい返事を待ってるぜい。
4036,3F65,3B30,437A,4C5C
3042,335A,4171,4673,306C,3B4D,3966,3C3C
「ほぉ…。おやっさんもお茶目な事するねぇ。」
「何なんでしょうね、この数字とかアルファベットの羅列は…。おまけにヒントらしい事も書いてないし…。」
「多分そんな事ないよ。ああ見えてもおやっさんは根の優しい人なんだから…。…ところで、インターネットってやつで温泉とか調べる事出来るの?」
浅田は門脇の向かいにある自分の机に座ると、その言葉に対して何やら企み事が閃いたらしく、ここぞとばかりに小馬鹿にしたような眼差しを見せた。
「げっ!…ま、まさか、…やった事ないんですかぁ…?」
…が、相手は門脇である。浅田と比べれば一枚も二枚も上手だ。
「…ん?…まぁね。私は君みたいに暇じゃないから…。」
「あら…、…そ、そう来ましたか…。」
「おやぁ?…もしかして、私が顔を真っ赤にして言い訳がましく怒鳴り散らすとでも思ってたの?…それとも、何?…泣きべそかいて教えを請うとでも思ってた?…そもそも、そんな事を考えていること自体暇な証拠なんだよ。…あ、あれだ、…どうせ、君のことだから『今時インターネットを知らない人なんて時代遅れですよ。僕なんかホームページまで持ってるんですから!』とか、なんとか言って自慢するつもりだったんだろうけど、私にとってそんなもの自慢でも何でもない。それどころか、そんな暇があったら少しは警察官らしくなれるように未解決の事件でも調べ直しなさいって言うけどね。…あ、そうそう、第一、君は………。」
「わ、解りました。解りましたよ!…どうせ、僕は未熟者ですよ!」
どうやら門脇の言葉が図星だったらしく、浅田は何とか話題を変えようと自前のノートパソコンを取り出すと接続の準備を始めた。まぁ、浅田の浅知恵などこの程度のものであろう。
「と、ところで、やってみますか!?…どうしますか!?」
「勿論やるに決まってるじゃない。…ところで誰も君のことを未熟者だなんて一言も言ってないよぉ。大丈夫、心配しなくても君は未熟者じゃないから…。」
…何ということであろう…。この思いもよらない門脇からの言葉に浅田は一瞬胸が熱くなった。そう、浅田にとっては部長や課長に誉め言葉を貰うより門脇に誉められることの方が、まるで盆と正月がいっぺんに来たように嬉しい出来事なのだ。浅田は思わず席を立ち上がると身を乗り出した。
「ほ、本当ですかっ!…ぼ、僕は未熟者なんかじゃないんですね!」
門脇は浅田の机に回り込むと、準備を整えた浅田を移動させパソコンに向かった。
「勿論だよ。君の場合は、未熟者どころか、それ以前の問題だからね。…ところでこれってどうやればいい……ん?どうしたの?そんなとこに座り込んじゃって…。」
既に御察しのことであろうが、彼は、例の如く"の"の字を床に書きながら"いじけモード"に突入していた。毎度の事ながら進歩のない人間である。そして、
「…一瞬でも、門脇さんの言葉に感動した自分が馬鹿だった…。」
と、呟いた。
「へぇ、すごいねぇ。何でもわかっちゃうんだねぇ。」
「何でも…って訳にはいかないですけど、殆どの調べものは解決出来ますよ。」
「だろうねぇ。」
数分後、既に浅田は立ち直っていた。この速さだけは天下一品である。
「あ、そうだ…。…あのさ、…私がこの署に配属になった頃、ある事件の捜査で『高宮台旅館』ってとこに泊まったことがあるんだよ。もう、十数年も前の事なんだけどねぇ。…で、そこの女将が上品な上に綺麗な人でねぇ…。まだ、あるのかなぁ…。ちょっと探してみよう…。」
門脇は慣れない手付きで…というより以前の話で、右手の人差し指一本で何とか文字を打ち込んで検索してみた。…が、残念ながら結果にはそれらしい記事が見あたらない。浅田も横からモニターを覗き込むが、勿論同様である。
「んー、無いようですねぇ。」
「あららら…、潰れちゃったのかな…?」
「そうとは限らないですよ。だって、その旅館がホームページをつくってなかったり、最近つくったばっかりだったりしたら、見つけ出すのはなかなか難しいですよ。」
「へぇ、そういうものなの?」
「ええ。…でも、旅館を扱っているサイトで引っ掛かってもよさそうなもんですから、もしかしたら…ていう事も考えられますけどね。」
その浅田の言葉に対して門脇は無言だった。…が、何か思い出したようで例の如く右手を額へとあてている。
「あ、そうだ…。そうそう、そうだ、思い出した…。」
「何を思い出したんですか?」
「えーっとねぇ、『高』っていう字なんだけど、これは"なべぶた"の下に"口"を書くよねぇ。でも、その旅館の名前で使っていたのは"口"じゃなくて梯子みたいに書く、昔の『高』って字を使ってたんだよ。…そうそう、確か、そうだった。…だから、見付からないんじゃない?」
「それは関係無いと思いますよぉ。」
「どうして?」
「だって、その字はこのパソコンには入ってないですし、例え、正式な名前には古い字を使っていても、検索したときにヒットしやすいように今の漢字を使ってると思いますよ。」
「そんな事は君に言われなくても解ってるよ。でも、もしかしたら、女将の拘りで古い字で登録してるかもしれないじゃない。…とにかく、その古い字の出し方を教えなさいよ。どうせ、普通に変換しても出てこないんだろう?…それに、もしかしたらいつものように君が見落としてるだけかもしれないし…。」
「門脇さぁん。その"いつものように"って一言は余分じゃないですか?」
「どうして?」
「どうして…って…、…まぁ、もう、いいですよ。…じゃ、取りあえず、普段出すことの出来ない文字は、まず…。」
門脇は浅田の指示通り…実際の仕事上では絶対に有り得ない風景ではあるが…作業を進めて行く。しかし、今度ばかりは浅田の"いつものような"見落としではなく、やはり、実際に登録されていないようだ。…と、なると、当然ながら、ここぞとばかりに浅田は強気な態度を示す。
「ほら、僕の言った通りじゃないですか。だから、このパソコンには入ってないんですって。」
「あらぁ…、ホントだねぇ…。…これ、欠陥品じゃない?」
「何言ってるんですか!…そんな訳ないでしょ!」
「あ、そう?…でも、これぐらいの字が入って無いようじゃ、欠陥品と同じじゃない。」
「…もう、…どうして、僕のものには何時も何時もそうやってケチをつけるんですか!?…車の時だってそうだし、………。」
その時である。門脇は浅田のお喋りを遮り、パソコンのモニターをじっと見つめながら、いつもの考えるポーズをとっているではないか…。そして…。
「えー、御無沙汰してました。…彼、浅田とこんなにお喋りしたのも久しぶりです。…と、言うのも、この改訂版が出るまでを御覧になった方はお解りだと思いますが、…えー、どうやら、管理人の手抜きで殆ど会話がありませんでした。まぁ、関係ない話はこれぐらいにして…。
さて、今回、まだ答は解っていませんが、…もし、私の推理が正しければ、おやっさんにはいつもの半額の代金で済みそうです。いやぁ、得しました。そうそう、ヒントですが、…えー、そう、貴方。貴方の目の前に答があるかもしれません。
では、またお逢いしましょう、…門脇でした。」
すみませんが、僕もよく分からないので、みなさんにお願いします。
斑猫 ◆XMrov1pg (2005/03/29(Tue) 21:35:22)
問題が長くてよくわからなかったんですが
最初のほうの暗号を解けばいいのでしょうか?
「清水三丁目 安楽荘二一四号室」
おだっち (2005/03/29(Tue) 22:44:17)
なるほど、16進数ですね。
パソコンで16進数の4桁で形成される物と言えば・・・
で、変換してみると、
清水三丁目
安楽荘二一四号室
に、なりますね。
サイン (2005/03/30(Wed) 17:13:43)
あ!ありがとうございます!
正解です!
※ 問題中に使用されている人名、地域名、会社名、組織名、製品名、イベントなどは架空のものであり、実在に存在するものを示すものではありません。