生物学者は死んだ(長文)
ぱんぷきん (2003/04/28(Mon) 21:56:09)
〜問題篇〜
私は車を出て、眩しい陽光に手を翳した。現場にはもう黄色いテープが張り巡らされてあって、鑑識のストロボが何回も光っていた。
黄色いテープをくぐりぬけると、確か前の事件で1度話した事のある巡査がきびきびと敬礼してきた。いつ聞いても気持ちが良くなる。私は適当に返事を返して、現場となった建物に入っていった。
白いどこかロシア風建築を思わせる屋根のとがったその家は、生物学者・熊野紀久が使用していたいわば研究所だった。庭には手入れが行き届いていないのか所々に褐色の枝垂れた草花が目に付く。僅かな段差を昇ると、意味も無く大きな茶色いドアが待ち受ける。
現場となったのは廊下から少し入った彼の書斎であった。廊下も含めあちこちに剥製が不気味なほどに見事な間隔で飾られていて、それがまたリアルなので、私は意味も無くどきどきしながら現場に向かったものだ。
白いもう見慣れてしまった人型のライン。カメラのフラッシュがそれを私の視界から遠ざける。ここで、この研究所の主、熊野紀久は殺害された。
コンビを組んでいるまだ若い樋渡警部がいつの間にか後ろに居たようで、ふと振り返った私と目が合うと、現場の状況を事細かに説明してくれた。
「被害者は熊野紀久、51歳。遅稲田(ちせだ)大学の生物教授もしています。死因は鈍器のようなもので何回も頭を殴打されていて、その為による脳内出血ですね。死亡推定時刻は昨夜の3時ほどです……女性でも殺害は可能でしょう。それと、被害者のポケットにこんなものが」
若い警部は自分のポケットから折りたたまれた薄い紙を取り出した。私はそれを受け取って開いたが……一瞬子供の悪戯かと思いさえした。
「ダイイング・メッセージとやらか?」
と、私は若い刑事に尋ねた。彼は何となく不安げに首を縦に振った。
さて、これにどういう意味があるのか……じっくり考えなければならないな。
〜
隣の部屋にはそれぞれ動機があって、さらに殺害時刻にアリバイの無い人物たち4人が集められていた。
「夜中の3時なんて……寝ていましたよ。アリバイのあるほうが不自然でしょう?」
と言ったのは熊野の妻、熊野春奈。
夫の不倫に気付いていたようで、その点では殺害動機はしっかりとあることになる。
「そうですよ! 僕は関係ありません!」
助手の1人である亀井孝義が叫んだ。妻、春奈の不倫相手……仕返し、ということなのか。邪魔になった教授を殺したと言う事も考えられる。
「全く、何故私がここに来なければならないのだ……」
「先生がお亡くなりになられたのは悲しいですけれど……」
愚痴を言っているのは疋田修三、熊野と同じ生物学者である。先日研究内容を盗まれたと大学内で喚いていたことから、容疑者にピックアップされた。
そして嘆いているのは助手の1人、朝林聡美。熊野と不倫しているという噂が流れていて、どうやらそれは真実だったらしい、しかし熊野が今度は新たな不倫相手に走ったらしく、その恨みによる犯行も考えられる。
私は4人の眼をじっと見た。
「これは凶器と思われる銅像です。どなたか見覚えはありませんか?」
私は凶器の銅像を全員に回して見せた。これは近くの焼却場の中に突っ込んであったもので、先ほど鑑識が見つけてきたものだった。
「見覚えありませんわ、そんな安そうな銅像。大方、あの人のコレクションとして
本棚にでもしまってあったんじゃないですか?」
と、熊野婦人。
「そんな硬そうな鈍器で何回も……痛そう、先生可哀想……ああ、あぁぁ……」
泣き出してしまったのは朝林聡美である。
「そんなもの知りませんよ、僕は。先生が大事にしていた剥製なら、大体知っていますけれど」
亀井は掛けている眼鏡を上げた。
「知らん、知らんぞ! わしはやってない! 3時は寝ていたんだ!」
あきらかに慌てているというか、言動がぎこちない疋田。
ふーん……。
私は腕を組んで、脳内をフル回転させようとしていた。
ぱんぷきん (2003/04/28(Mon) 22:10:05)
〜事件篇〜
研究所で生物学者である熊野が殺された。そのポケットにはダイイングメッセージと思われる暗号文が遺されており、それは容疑者のうちの誰かを指す暗号だと思われる。
まず始めに断っておくと、この事件に共犯は存在しない。また、確実に彼は殺害されたものとする(事故でも自殺でもない)。
以下がその暗号文である。
−−−−−−−−
│はさるぎすばくき│
│さきいぺめりうみ│
│もつつやおもとつ│
│あつばんしさろば│
│んかずいるうよち│
│ときなんずかふめ│
−−−−−−−−
・登場人物
熊野紀久(くまの のりひさ)<51>……生物学者。鈍器により殺害される。
朝林聡美(あさばやし さとみ)<32>……熊野学士の助手で、不倫相手。
亀山孝義(かめやま たかよし)<23>……熊野夫人の不倫相手。熊野の助手。
疋田修三(ひきた しゅうぞう)<52>……生物学者。熊野に研究を盗まれる。
熊野春奈(くまの はるな)<49>……熊野の妻。夫の不倫に悩む。
神尾礼康(かみお れいこう)<47>……敏腕刑事。文面では『私』。
樋渡亮輔(ひわたり りょうすけ)<22>……新米刑事。神尾とコンビを組む。
・問題
『熊野教授を殺害した犯人は誰か』。
その理由は暗号解読、文面どちらからでも読み取れる。まずは暗号解読をし犯人の名を挙げてから、文面上にあるある『矛盾』を見つけ出し、それを証拠として提示してもらいたい。では、諸君の検討を祈る。
だんご (2003/04/28(Mon) 22:19:06)
犯人は朝林聡美
矛盾は「そんな硬そうな鈍器で何回も・・・」の「何回も・・」のところか。
正直、暗号は解けてません。でもなんとなく朝林の名前が見えたの。
ぱんぷきん (2003/04/28(Mon) 22:28:25)
だんごさん>
早速のレスありがとうございます!
えー、一応暗号も解いてくれるとありがたいです(>_<)
暗号を解いた上で、証拠としてそれを出してください!
暗号解読お待ちしております♪
葉蔵 (2003/04/29(Tue) 03:58:41)
縦横のアナグラム。縦列が剥製対象動物。横列が剥製の関連品目。
残る文字は「あさばやしさとみ」。
矛盾点は「何回も」。
岩名 杏奈 (2003/04/29(Tue) 08:45:25)
おはよう御座います♪
ガァ〜〜〜ン(−−;;
難し過ぎて解りませんです…(T_T)(泣)
スマイリー (2003/04/29(Tue) 09:36:09)
う〜ん・・問題文の矛盾は分かったんですけど、暗号が全く解けません(泣)
一応矛盾点は、皆さんと一緒で「何回も」のところです。
何回も殴ったことは警察と主人公と犯人しか知らないわけですから。
ぱんぷきん (2003/04/30(Wed) 21:20:37)
皆さんレスありがとうございますw
葉蔵サマ>
剥製の使用器具なんて混じってるんですか?(^^;
知識が無くても解ける問題デスw ていうか僕自身剥製なんて知りません(ぉ
用意された解答じゃないほうに行ってしまう葉蔵さんって!?
解読方法を教えて下さい♪
スマイリーさま・岩名 杏奈サマ>
難しいですかw 最高の誉め言葉ありがとうございますw
じゃあ、ヒントを。
『ヒントは暗号文中にしっかり隠れています』。
でわでわ(^^)
Yuko (2003/04/30(Wed) 23:20:37)
葉蔵さんの書かれた「剥製の関連品目」って、
ぱんぷきんさんの書かれた「文中に隠された暗号のヒント」
のことなんじゃ…ない…かな?違ってたらごめんなさい。
葉蔵 (2003/05/01(Thu) 00:49:08)
縦列=鳩・啄木鳥・鶴・人鳥・雀・鴨・梟・燕
横列=鳥類図鑑
残った文字で鳥類図鑑に近いもの=あさばやしさとみ
以上が僕の解法なのですが…
ぱんぷきん (2003/05/01(Thu) 19:01:14)
う〜正解されてしまいましたか(><)
僕的には『文頭に鳥が来るように並べ替える』ことを予想していたんですがw
剥製の関連品目……それのことだったんですね(汗
つい接着剤とかそういうこと考えてしまいましたw
申し訳ございません(ーー;)
今回は割とあっさり解かれてしまって……w
次回お暇でしたらまたお付き合いください。
※ 問題中に使用されている人名、地域名、会社名、組織名、製品名、イベントなどは架空のものであり、実在に存在するものを示すものではありません。