その炎が燃やしたもの
郁人 (2004/04/02(Fri) 07:35:44)
○登場人物
千条夏都樹……警察官。どこかの警部。
東秋彦……警察官。千条の部下。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
冬の寒さが残るある日の夕方、家一軒をすっかり燃やし尽くす火事が起きた。
消火活動を終え、現場を検証すると男の仰向けの遺体が発見される。
死体は黒焦げだったが、すぐに身元は判明した。
この家に一人で住んでいた、井上権一郎……
小規模ではあるが会社を経営する社長であった。
数日後。
署内で東秋彦は上司の千条警部へ報告をしている。
「死因は焼死ではないそうです、被害者の腹部には包丁が刺さっていました。
刃物による損傷が死因ではないかと。」
「殺害してから証拠隠滅のために火を放った……」
「おそらくは。焼け跡の検証をしているのですが、
凶器とライターが燃え尽きそうなもので無かっただけでも幸いですよ……
床までボロボロの真っ黒で、事件の参考になったかもしれないものはすでに灰でしょうねぇ。」
「その凶器は?」
「被害者宅にあった包丁だそうです、裏も取れてますよ。
指紋も調査したようですけど、事件を進展させるような結果は出なかったみたいですね。」
「調べつくした挙句にお手上げってわけか。
ライターって言うのはコレね? ……また見事に真っ黒ね……」
火事に付いての詳しくはこうである。
焼け跡の頻度から、火の勢いの強かった場所が推定された。
遺体のすぐ傍(出火場所)と、そこから2メートル弱離れた場所にもう一つ。
その離れた場所と言うのは殺害現場の部屋のドア横付近になるそうだ。
事件の日に丁度休暇で現場にいなかった家政婦の証言である。
「ストーブ用の灯油の容器が置いてあったそうです。
部屋で適度に広がった炎が、それに引火して一気に広がってしまった……
はい、これが詳しい報告書です。」
秋彦は読み上げた用紙を千条に手渡す。
彼女はデスクの上に肘をつき、静かに目を走らせた。
以下、当事件において必要と思われる情報のみ簡潔に提示しておく。
・被害者宅には、被害者である井上権一郎の他に家政婦の樋上明子が
家事手伝いで日通いしている。権一郎の妻は他界している。
・被害者は3年前の事故で歩けない身体になり、車椅子生活だった。
火事現場では、遺体からかなり離れた場所でその車椅子は発見された。
・限りなく全焼に近い現場で焼け残った床、発見された被害者の身体の下に
明らかに書かれたと思われる血文字らしきものの一部が残っていた。
文字の一部なのか、解読は不可能。
・その日は家政婦の樋上は休みの日であり、家には権一郎しかいなかった。
・被害者及び周りの人間は現在煙草を吸わない。唯一、甥の和弘が喫煙者であり、
現場に落ちていたライターも被害者宅に訪れた際に忘れた和弘のものであった。
・ライターは前日から被害者のポケットの中に入っていた。
自ら和弘に返そうと権一郎が持っていったのを事件前夜に樋上が確認している。
・遺体の損傷の具合などにより正確な殺害時刻は判明しなかったが、
樋上の携帯電話に午後5時10分頃に権一郎本人による自宅からの電話があった。
・出火時間は午後5時30分頃。近辺住民の証言により、この時間は正確である。
○人物詳細(殺害時というのは推定時刻である)
樋上明子(ひのうえあきこ)
権一郎の自宅で働いている家政婦。第二、第四水曜日を休日と決めていた。
事件の日は娘と一緒に街に買い物に出かけている。
買い物をした際のレシートの時間を確認したところ、
殺害時・出火時ともに事件現場から遠く離れた大型デパートにいたことになる。
井上宗二(いのうえそうじ)
権一郎の弟。事件当日の夜8時に仕事の話で被害者宅を訪れる予定だった。
仕事を昼過ぎに切り上げ、それ以降はアリバイが無い。
本人の話によると、夜の準備のために自宅で書類の調整をしていたそうだ。
携帯のメモリーにて、殺害時・出火時ともに幾度か会社仲間と通話した記録が残っていた。
電話相手の確認も取れた。
井上和弘(いのうえかずひろ)
宗二とは別居中の大学生の息子。
現場に落ちていたライターの持ち主、事件の前日に被害者宅に置き忘れた。
事件当時は大学の講義に出ていたと言うが、確認は取れていない。
(大教室での講義で、出席も取らず、和弘の知り合いも受講していなかったため)
友人の話によると忘れたライターはお気に入りのものらしく、
講義が終わり次第取りに行くと話していたそうだ。
浅田勇(あさだいさむ)
権一郎の秘書。
足が不自由なため会社に行く事の少ない権一郎に形式的な報告という形で、
毎週水曜日・土曜日と被害者宅を夕方6時過ぎに訪れている。
当日は早くから出かけ、5時半近くに権一郎宅すぐ傍の喫茶店にて時間を潰していた。
喫茶店の店員が、火事現場から煙が上がってるのを見て
顔を真っ青にして驚いている浅田を目撃している。
警察はこの事件を強盗殺人と被害者を知る者による殺人の二つの線で捜査を進めていた。
上記の4人は、被害者を知る者による殺人であった場合、
動機やアリバイの点で容疑者としてあげられた人物である。
「ふむ」
別の事件の捜査を終えたばかりの千条は、
今朝方この事件の捜査に加わるように命じられた。
自ら調査に走らずとも、充分過ぎるほどの資料が手元に回ってきたわけだ。
そして、これだけ捜査が進んでいるにもかかわらず、
容疑者の枠組みを4人に絞ることで手一杯であったのが彼女の協力を仰いだ理由である。
「で、捜査し尽して、もうわかりませんから私に考えてください……と?」
皮肉たっぷりに言い放ち、猫のイラスト入り彼女専用カップでコーヒーに口をつける。
朝に弱い千条の思考は低回転で、
事件担当の任から逃れられたと思った矢先に厄介ごとを任せられたからであろうか……目が死んでいた。
「えぇっと……とりあえず、どう思いますか?
決め手になるような証拠も無いので、もうお手上げ寸前なんですよぉ……」
「そうねぇ……」
千条は凶器である真っ黒の包丁の写真をぼんやりと眺めていた。
「秋彦君、2つほど調べてきて欲しいのだけど……」
彼女は先ほどの資料の中から、一人の容疑者を指差す。
「この人のことをもっと詳しく。あと被害者の権一郎氏の性格を。」
「……この人が犯人なんですか!?」
さて、彼女が推理した犯人とはいったい誰でしょう?
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
出題は初めてですが、よろしくお願いいたします。
長文になってしまい少々読みにくいのはご了承くださいませ。
なお、この文章に登場する人物は、全て架空の人物です。
事件も私の想像上のものです。
キョウ (2004/04/02(Fri) 10:13:17)
どうも。
樋上明子が怪しいと思われます。
まず、凶器の包丁ですが、これは家政婦なので包丁の場所は
熟知していると思います。
次にライターですが、問題を読むとライターが被害者のポケット
に入っていることを知っているのは樋上明子だけと読み取れます。
そしてアリバイについてですが、殺害後デパートに行ってゴミ箱、
またはレシートを捨てる専用のゴミ箱(よくコンビニのレジの前
にあるやつ)から拾った。若しくは、娘と共犯で娘だけデパート
に行った。
最後に被害者の性格についてですが、これがよく解りません。
自信は無いですが、被害者はよくメモを書く性格であった。
休暇のはずの家政婦が何故か家にきた。当然、被害者はそのこと
をメモにとった。家政婦はそのメモを探したが、見つからず、
家を焼くことにより、証拠を隠滅した。
っということで犯人は樋上明子でお願いします。
くおん (2004/04/02(Fri) 13:15:59)
こんにちは。
とりあえず、思いついたことだけですが。
浅田勇が犯人でしょうか?
犯人は被害者を被害者宅にあった包丁で刺した後(手袋などをして)、被害者の血文字で樋上を表すものを偽装した。その後、喫茶店に行き、アリバイを作って、6時に第一発見者となる。
包丁には家政婦として働いている樋上の指紋がついているので、一番の容疑者となる。
被害者は樋上を容疑者にしたくなかったが、血文字を消して包丁の指紋を消すということまで出来るほどの力が残ってなかったので、自分で火をつけて証拠を消そうとした。
なので、火事になったとき、浅田は「顔を真っ青にして驚いている」状態になったのでしょうか?
被害者宅の包丁を使って殺したのなら凶器の出所ははっきりしているため、火事で燃やして証拠隠滅するという行動がおかしいと千条は思ったとか。
ほとんど自由推理なので、もっと考えてみます。
郁人 (2004/04/02(Fri) 17:49:04)
挑戦いただき、ありがとうございます。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
○包丁について
「その包丁が何か推理するポイントなのですね?」
秋彦は興味津々に聞いてきた。
「そーね。」
「あ、いやちょっと待ってくださいよ……ん〜、そうか!
家政婦なら包丁の置いてある場所を知っているはず!」
「君の家では台所以外の場所に包丁を置いているのかしら?」
「僕は包丁はキッチンでしか使った事ありません。」
「普通の一般家庭ではだいたいそうよ。」
「……えと、それじゃ指紋ですね?」
「現場で凶器を調達しているって時点で指紋なんてたいした問題じゃないの。」
「はぁ……?」
「凶器の現場調達というのは、凶器から自分の面が割れないのを考慮してのこと。
そんな犯人が指紋云々の初歩的なミスを見逃すはずが無い……
仮に残っていたとしたら、犯人の作為的なものである可能性も出てくるわ。」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
○キョウさん
興味深い推理をありがとうございます。
メモごと家を燃やす……というのは、おもしろいです。
私も実はミスリードとして、導入しようかと検討していたネタでした。
被害者の性格が細かくなるため見送りましたが……
なるほどメモを書く性格ですか、思いつきませんでした。
さて、包丁についての推理は上記のヒントでご理解いただけると思います。
ライターについては、在りかを知る者は被害者と樋上だけです。
ただ被害者と犯人の接触時に、ライターの存在を知ることが出来たかもしれません。
特にキョウさんの推理した樋上犯人説であった場合、
・火を放った後にライターを持ち去っていない。
・自分が犯行に使ったライターの存在を知っていた証言している。
など自分に不利益と思われる行動が気になります。
○くおんさん
鋭い推理ですね。
>被害者は樋上を容疑者にしたくなかった
というのは、問題の製作者でありながら感心してしまいました。
実はほぼ正解と言わざる得ない推理なのですが、いくつか疑問点があります。
何故犯人は車椅子を被害者から遠ざけたのでしょう?
くおんさんの推理から考えると、
血文字も消す事が出来ないほど弱った被害者から
車椅子を奪い去る行為は無意味に思います。
少なくとも現場近くにあっても、犯人にとってはなんら問題ないはずです。
被害者に車椅子を使ってアクションを起こすだけの余裕がある可能性を含むのなら、
血文字の偽装工作などしようとは思わないでしょう。
ペンギン (2004/04/02(Fri) 21:20:44)
わかりません
トリア氏 (2004/04/03(Sat) 00:07:36)
初めて書き込ませていただきます。宜しくお願いします!
井上和弘が犯人だと思います。
まず井上がタバコを吸うためにライターを返して欲しいと言う。
(被害者の性格は、人に物をあげたり返したりする時は、必ず
立って相手に渡すことにしておく。)
そして立った時にいきなり、隠し持っていた包丁で相手の腹部に刺す。
被害者は倒れ、そばにあった車椅子は、倒れた被害者に押されて
遠くに滑っていった。
最後に火をつけた理由は、井上は被害者宅でタバコを吸っており、
その煙を紛らわすため火をつけた。
かなり無理があるかもしれません。もう少し考えてみようと思います。
清老七対子 (2004/04/04(Sun) 18:03:28)
初めまして。清老七対子と申しますm(__)m
一点、確認なのですが、「他殺」であることは
間違いないという前提でよろしいのでしょうか?
この問題のポイントは、犯人は、被害者の死亡後、
火を放って何らかの証拠物を焼失させたと考えられるが、
したがって、そのような行動をして得をする人物は誰か?
ということなんだろうと思います。
その線で行くと、いちおう、
「被害者が自殺を他殺に見せかけるため、ロープ等各種
の小道具をいっぺんに始末した」
という推理も成り立つように思うので確認させてください。
清老七対子 (2004/04/04(Sun) 18:23:14)
もう1点、確認させてください。
> ・遺体の損傷の具合などにより正確な殺害時刻は判明しなかったが、
> 樋上明子(ひのうえあきこ)
> 殺害時・出火時ともに事件現場から遠く離れた大型デパートにいたことになる。
> 井上宗二(いのうえそうじ)
> 携帯のメモリーにて、殺害時・出火時ともに幾度か会社仲間と通話した記録が残っていた。
正確な殺害時刻は判明しなかったという上段の文章と、
樋上と、宗二の「殺害時」の所在場所をいう後者の文章はやや矛盾っぽいです。
後者でいう「殺害時」は、5時10分〜30分までの間、という理解で
よろしいのでしょうか?
郁人 (2004/04/04(Sun) 23:27:56)
挑戦していただき、ありがとうございます。
○トリア氏さん
>井上和弘が犯人だと思います。
>まず井上がタバコを吸うためにライターを返して欲しいと言う。
可能性としてありえる話ですね。
あと、私の文章が詳細を示していないので反省すべき点なのですが
車椅子は「かなり離れた場所」というのは
明らかに何らかの意思で移動させられたとわかるぐらいの場所です。
殺害現場の部屋ではないとしておきましょう、
置いてある場所は事件に関係ないので手を抜いてしまいました。
さて、ここでも疑問があるので提起しておきましょう。
・井上和弘が犯人だとすると、彼は何故ライターの話を友人にしていたのか。
・火を放つのに使った自分のライターを現場に残していった心理は何か。
○清老七対子さん
>この問題のポイントは、犯人は、被害者の死亡後、
>火を放って何らかの証拠物を焼失させたと考えられるが、
>したがって、そのような行動をして得をする人物は誰か?
>ということなんだろうと思います。
なるほど、自殺ですか。
前日に偶然忘れていったライターを
自殺計画に自然に盛り込む辺りが少し弱いのですが……
盛大な装置トリックで自分を殺し放火まで成し遂げるのは可能かもしれません。
出来なくもないのですが、特殊な事情でもない限り、
このような形で計画を立て実行する事はありません。
これは前提でもなんでもなく、事件を推理すればわかります。
>正確な殺害時刻は判明しなかったという上段の文章と、
>樋上と、宗二の「殺害時」の所在場所をいう後者の文章はやや矛盾っぽいです。
>後者でいう「殺害時」は、5時10分〜30分までの間、という理解で
>よろしいのでしょうか?
問題文章から抜粋すると、
>○人物詳細(殺害時というのは推定時刻である)
の部分でご理解いただければ幸いです。
清頭七対子 (2004/04/04(Sun) 23:54:15)
う〜ん。
この問題文だと、死体の状態からは殺害時刻を推定できそうにもない
とも読めますから、その場合、死亡「推定」時刻の根拠は、死体以外の
外的状況ということになりそうです。その場合、被害者からの電話時刻
が推定の有力な根拠になってしまうはずなので、それを確認しておきたい
というのが質問の意図です。
もっと端的に言えば、樋上への電話は何者かが工作したものであり、
死亡推定時刻はそれよりもズッと以前だと考えることも、
この「問題文」が許容しているのかどうか、それが気になるのです。
「司法解剖の結果、正確ではないが、ある程度の幅をもった
死亡推定時刻は分かった。その時刻と電話時刻との前後関係は、
問題文上はブランクである」
という理解でよろしいでしょうか?
清頭七対子 (2004/04/05(Mon) 00:48:13)
まあ、細かいことは抜きにして、ごく普通に「死亡推定時刻は
5:10〜5:30」と読むことにして先に進みます。
そうだとすれば、樋上は消します。彼女は、和弘が当日ライターを
取りに来ることを知っていたわけですし、おまけに、何時に来るか
も不確定。犯行直後に鉢合わせする可能性もあるわけですから、
危険すぎて実行できないというのが普通でしょう。
次に、和弘も消したいです。
ライターの点は、仮に和弘が犯人だとしても持ち去らない(樋上が
ライターを忘れたことを知っているのですから、持ち去ったりすれば
かえって怪しまれます)でしょう。
しかし、いくらなんでも「講義が終わりしだい取りに行く」と
広言してから、何のアリバイ工作もなく、行き当たりばったりに
殺人に及ぶというのは何とも普通とは思えません。
もちろん、激情にかられて殺してしまった・・・という線は
ないではないかもしれませんが、一応、消しということにします。
残る2名ですが、宗二は8時、浅田は6時に被害者宅を訪問する予定が
決まっていたわけです。お互いにビジネスの関係ですから、お互いに
訪問予定があることを知っていた可能性は高いと考えます。
そうすると、仮に、宗二が犯人だとすると、かなり際どい時間帯に犯行に
及んだとしかいいようがありません。犯行時に鉢合わせしないまでも、
近くまで来ている浅田氏に出会う危険性はかなり高い。現に、当日、
浅田氏は近所まで早めに来ていたわけですし、普段もそういうことが
あるかもしれません。宗二も消しますね。
残るは浅田ですが、かなり有力です。
樋上が休みなのは当然知っていたでしょうし、宗二の来訪までは
2時間以上の余裕がある。和弘が来る予定があるのは知らないはずですから、
その危険性は計算外だったのでしょう。
しかし、彼が、火をつける理由は特に思いつきません。
むしろ、火をつけたのは、断末魔の被害者だという気がします。
ここからは、完全な想像ですが、被害者は、何らかの理由で
他人に死に顔を見られたくなかった、もしくは、自分の死を
早めに外部に知らせたかった、はたまた、ジワジワ失血死する
よりは一思いに死にたかった等々の理由(我ながら説得力ないです)で、
浅田に刺された後、たまたまポケットに入っていたライターで、
みずから火を放った。
一応、こんな風に考えます。
郁人 (2004/04/05(Mon) 03:06:16)
○清頭七対子さん
死亡推定時刻についても、推理する上では問題ないと考えます。
この部分が曖昧なのはリアルを追求しただけで特に意識したわけではありません。
仮に電話を偽装トリックだとすると、またいくつかの矛盾が生まれ
そこから推理が破綻するのではないでしょうか。
あと、和弘がライターを取りに行くと知っていたのは本人とその友人のみです。
被害者と樋上は、ライターをいつかは取りに来るかもしれないという予想だけでした。
被害者本人が身に着けるように持っていた理由は、
樋上の休みの日に和弘の訪問があった場合、問題なく渡せるようにと考えてです。
(車椅子生活のため、どこか不定の場所に置いてあると面倒ですよね?)
推理の至った結末は素晴らしいです、
先のくおんさんと同じく正解と言ってしまいたいところですが……
お二人とも森は見えてるのに、そこに生えている木の種類が見えていないようで
私としてもどうコメントしていいのやら悩んでおります。
決定的な証拠では無いのですが、現場には痕跡がいくつも有りましたね?
被害者が自分で火を放ったのであるならば、その火はダイイングメッセージです。
これを正しく理解するには、
事件の流れによる被害者の心理と犯人の行動を推理する必要があります。
次回にでも解答編を仕上げますので、今しばらくお待ちくださいませ。
清老七対子 (2004/04/05(Mon) 11:39:11)
あ、なぜか自分のHN書き間違えてました(^^;;;
「清老」でお願いいたしますm(__)m
> 仮に電話を偽装トリックだとすると、またいくつかの矛盾が生まれ
> そこから推理が破綻するのではないでしょうか。
↑は同感です。誰が犯人だとしても偽装するメリットが浮かびません。
せいぜい樋上でしょうが、危険すぎます。
さて、前回の私の推測(かなり不正確な筋道なので、あえて「推理」
とは申しません)が、ある程度まで当たっているのだとすると、
「放火の犯人(=殺人の被害者)が燃やそうとしたものは何か」
というのが郁人さんの問いかけだと理解しました。
被害者は足を奪われて動けない。仰向けの状態。
彼の背中の下には血文字(の一部)。
被害者は唯一動かせる手を使って、ポケットの中のライターで点火。
失血死より焼死の方が100倍辛いのは自明ですから、そこまで
して消したかった物は何か?
私には、「血文字の残りの部分」としか考えられません。
これも、くおんさんの推理と同じですね。
おそらくは、横たわる彼の身体の周囲一杯に血文字は広がって
いたのだろうと推測します。
プライドの高い被害者は、その状態のまま、おめおめ死んでいく
屈辱に耐えられなかった(?)
しかし、動けないのですから、その巨大血文字を消す方法は
一つしかない・・・
そこで、薄れ行く意識の中、被害者は火を放った・・・。
こんな感じで、どうでしょうか。
血文字の内容は「解読できない」のですから、分かりませんが、
被害者が耐えられないような罵詈雑言、ということになりますか。
くおん (2004/04/05(Mon) 12:54:30)
こんにちは。
>何故犯人は車椅子を被害者から遠ざけたのでしょう?
とりあえず、浅田犯人説で前の推理からつなげると、浅田は被害者が樋上に電話をかけた後、包丁で致命傷を負わせて置いた。そのとき車椅子は被害者が逃げられないよう、他のところに置いておく。
その後、すぐに浅田は喫茶店に行く。被害者は逃げられないので、そのうちに死んでしまうが、浅田は喫茶店にいるので、死亡時刻のアリバイができる。
6時に被害者を発見したときに、車椅子を戻そうとしたのでは。。。
火をつけたのは、自分がすぐ死ぬことによって、浅田のアリバイを崩そうとしたとか。
違う考えだと、被害者を一番初めに発見するのが犯人なので、血文字を書いてもすぐ消されると思って、自分の下に書いて火をつけたが、残念ながら読み取れないものになってしまったとか。
うーん、もう少し考えてみます。。。
れいど (2004/04/06(Tue) 00:34:26)
僕もなんかほとんどくおんさんと同じです。
浅田は被害者に致命傷を与えた後、車椅子を遠ざけ移動出来なくし、自分はその間に喫茶店にてアリバイを作る。
6時には自分が第一発見者となり、DMがあればなんとでもなるとおもっていたのだろうが、被害者は自分の下に血文字を書き放火。血文字自体は残ったのだが読み取れないものであった。
ただ、そうなると包丁も被害者の性格もなんの意味もなくなってしまう気がしてならないわけですが。
解答までとりあえず粘ります。なっとぅ
郁人 (2004/04/08(Thu) 23:40:13)
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「被害者、権一郎氏の性格ですが……芯のしっかりした優しく温和な人柄だったそうです。」
「あ〜……他には?」
「他……ですか?」
午前中に聞き込みで走り回っていた秋彦は、
上司の言わんとしていることを1ミリも理解していなかった。
「えっと……某有名な大学の出身で、大企業に就職。独立して……」
「履歴はいいのよ。」
どうやら千条と彼の推理には、思った以上に距離があるらしい。
「負けず嫌い。」
「はぁ……?」
「機知に富んでいて、頭の回転が速い。」
「……し、調べなおしてきます……」
「その前に君にも事件を考えてもらおう。」
疲れたようなため息で、飛び出そうとする秋彦を引き止めた。
「事件の大体の流れは予想できるわね?」
「はいっ、任せてください!」
「それじゃ秋彦君、犯人のつもりで事件再現してみて。と、その前に……」
千条は黒焦げの包丁の写真を手に取る。
被害者宅の包丁……凶器だった。
「現場からの凶器調達と日時選択……これだけでも計画性が窺える、
犯人は極めて冷静に犯行を行ったものと考えた方がいいわ。」
「確かに、曜日も時間もまさに選んだとしか思えませんねぇ。
やはり外部犯の線は薄いですね。」
「さ、秋彦君。ココは殺害現場よ、そこキッチンね。」
「はいっ、まず顔見知りであるだろうから家に訪れて……
トイレにでも行くとか理由でもつけて台所で包丁を拝借と。」
「いちおう手袋はつけているということでよろしく。」
「もちろん、計画通りですよっ。そして現場で車椅子の被害者のお腹に目掛けてグサッと!」
犯人になりきった秋彦は、コミカルな動きで何も無い空間を架空の包丁で刺して見せた。
「よしっ、致命傷は負わせた……でも車椅子に乗りっぱなしだと
逃げられたり電話されたり厄介だし、いちおう取り上げておこう。」
わざとらしいセリフとともに、車椅子から引きずりおろし、車椅子だけ移動させる……。
「ふう、あそこまで持っていけば大丈夫。おや、こんなところにライターが!」
「落とした可能性、もしくは計画の一部にすでに放火はあって
別のライターを持ってきていたかも……と言うことでよいのかな?」
「その通りです。む、やつめ……まだ意識があったのか、
ダイイングメッセージなんて残してるな。
だがしかし、全部燃えて真っ黒こげだ!」
架空のライターを律儀にも火をつける仕草でいる秋彦。
呆れた表情でそれを見ている千条。
「クライマックスで申し訳ないのだけど。」
「はい?」
「それは使わないの?」
架空の殺害現場のどこかを千条は指差した。
「…………それ?」
要領を得ないぽかんとした顔の秋彦は首を傾げる。
「君はこの部屋に入る時、車椅子を移動させた時、それを見たはずだ。
計画していたのならなおさら。それを使わないわけが無い。」
殺害現場の部屋のドア横付近。
『ストーブ用の灯油の容器が置いてあったそうです。』
「あっ!」
「忘れてもらっては困るな、君は冷静に対処できる犯人だ。
燃やす意思があるのなら、より確実に。
ダイイングメッセージ、死体、現場に残した何か。
これらを燃やすためだけなら、私はそれを使うわ。」
「容器に入ってたから、灯油だって気付かなかったとか?」
「君の家では灯油を入れる容器、あるいはそれに酷似した容器に
灯油以外の何かを入れて使用するのかしら?」
軽く想像してみる。
色々な液体を入れてみたが、結局灯油がしっくり来る。
自分が犯人なら、匂いくらい嗅いで確かめただろう。
「そうか……こんなに近くに灯油が置いてあることを知らなかったのかな?」
「さあ?むしろ使えなかったのではないかしら。」
「知ってて使わなかったのですか?」
「ええ。何故なら彼は致命傷を負った上に車椅子を奪われたのだから。」
秋彦の寸劇を眺めているだけだった千条は、
唖然としている秋彦から犯人と言う配役を交代する。
「途中までは君と同じ。被害者を刺し、逃げないように
……これはおそらく犯罪を完璧にするための保険……
車椅子を奪い去る。その後、何らかの理由で現場を離れるの。
たぶんアリバイを作るために。」
「犯人の計画には放火は無かった……」
「あるわけないわ、証拠を出さないように計画してるのに今更何を燃やすと言うの?
逆に犯行が早期に露見してしまうだけよ。」
「被害者はまだ生きていて、
ダイイングメッセージを書いていたのを犯人は見つけてそれで火をつけたのでは?」
「ダイイングメッセージを消すのは簡単。
それに犯人は、被害者はまだある程度生きていた方がよかったのかもしれない。
死亡推定時刻が多少なりともアリバイと重なるようになる、そのための車椅子の剥奪かもね。」
「そんなっ、いくら移動できないからって……現にダイイングメッセージを書いて……
あれ? それじゃなんで放火なんかを……?」
「被害者の権一郎氏は、ダイイングメッセージで犯人を告発した。
だけど気付いたのよ……このダイイングメッセージはおそらく無駄になると。
犯人もそれを知っていた、ダイイングメッセージも予想範囲内で……
だからこそ完全に息の根を止めなかった。
犯人は殺害現場に手を加えても平気な立場だったから。」
秋彦の脳みそは、やっとのことで彼女の考え至る推測に辿り着いた。
「つまりは……第一発見者になるであろう、なってもおかしくない人物が犯人……
それで浅田勇と言うわけですね……」
「資料を見ると、現実には彼のアリバイ作りも破綻したようだけど。
慌てたでしょうね……おそらく彼の計画では、
もっとしっかりとしたアリバイが作れるはずだったのではないかしら?」
「権一郎氏は浅田の企みに気付き、手元に偶然あったライターで火をつける……
それで火事になったものだから、浅田の計画はそこで終わらざる得なかったのですねぇ。」
「まず火事になったことで近辺住民が浅田よりも早く自分を発見してくれないか、
そうなれば血文字のダイイングメッセージは自分の身体の下。
早い段階でならそれは燃えずに読まれるかもしれない、そういった期待もあったのかもね。
しかし炎は、不運にも灯油によってその勢いを増してしまう……」
「でもその火事は、きっちり最低限の仕事を果たしたと言う事ですかね?
こうやって我々に、なんで燃えないといけなかったかって必死に考えさせたのですから。
犯人の思い通りにさせるかっていう被害者の叫びを感じますね。」
秋彦が柄にもなく上手くまとめてしまったのが面白くないのか、
千条は眉をひそめ、そっぽを向いてしまう。
「事件を複雑にしただけか、あるいは……
完璧になるはずだった犯罪が燃えていったのか。」
元気に裏付け捜査に走って行く秋彦の背中に、そっと呟いた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
以上が解答編になります。
私事により投稿が遅くなりました、申し訳ありません。
確実に第一発見者になったはずの人物が犯人である
というところまで推理できれば完璧でした。
被害者が犯人の計画に死ぬ間際で気付き、阻止するための苦肉の策が放火です。
来訪が不定な和弘が第一発見者になる可能性もありますが、
もしも和弘が犯人であるならば被害者自身がその可能性に気付かず、
火を放たないでしょう。
清老七対子さん、くおんさん、れいどさん、3人様の推理は
限りなく私の解答に近いものと言えるでしょう。
皆様「被害者の性格」に惑わされたようで……これは余計でしたね。
一般常識的に普通の人が死の間際で、
このような行動を起こせるものかと考えた末に追加した項目でした。
論理的な問題でありましたが、考えていただいた方に感謝いたします。
清老七対子 (2004/04/10(Sat) 02:13:35)
済を解除まではしないですけど、一言だけ。
死亡推定時刻にアリバイがあっても、失血死させてジワジワ殺したことが
分かってしまっては、結局、犯行時刻の推定は可能なので、アリバイにも
何にもなりませんよね・・・。
ちょっと、浅田が現場を離れる理由に弱い点があると思います。
被害者の側から見れば、自分の助かるわずかな可能性(偶然、人が来れば
助かるかも)を消し去ってまで、火を放つわけですから、
もう少しハッキリした有利性を犯人側に与える(被害者にもそれがハッキリ
分かる必要がある)のでないと説得力も・・・やや。
それと、かなり息のある状態で火を放ったのなら、直接の死因は焼死に
なってしまうので、これも問題の前提と外れませんか?
郁人 (2004/04/10(Sat) 03:59:15)
○清老七対子さん
はい、お答えしましょう。
犯人が現場をすぐに離れた「動機」は弱いと言うか詳しく推理していませんが、
もしも犯人が現場にいて被害者を監視できる立場でい続けたなら
「車椅子を被害者から奪い去る」必要ありませんよね?
何か別の意図でそういう行動をしていたのなら別ですが、
犯人の計画事態が終結しておらず、現実的に実行されていないため
想像推理で弱いと感じられるのかもしれません。
>失血死させてジワジワ殺したことが分かってしまっては
ちなみに、彼の計画通りに事件が進んでしまった場合に
被害者の死亡推定時刻が正確に割り出せるような状態であるかどうかさえも
犯人のみぞ知る、という事です。
アリバイ作りも、もっと我々にとって興味深いものになっていたかもしれません。
そういった意味で犯人の持つ実行されなかった計画への「理由」は
我々推理するだけの側は、強いとも弱いとも付け難いものだと思います。
解決編においても「たぶん」だの「おそらく」だのと曖昧にしているのはそのためで、
決して断定していませんよね?
アリバイ作り以外で現場を離れた理由があるかもしれない可能性は否めません。
>自分の助かるわずかな可能性
これは限りなくありえません。
無いからこそ、最後の手段をとったわけです。
人が来たところで、勝手に家の中に入りますか?
約束が有った人、家政婦の樋上などは疑問を持って入ってくるかもしれません。
しかし、犯行前に樋上とは電話をしていますね。
犯人は現場を離れる時にしっかり施錠もしたでしょう。
和弘及び、その他来訪者が家に来ても中から返事もなく門前払いになります。
そういった意味で、被害者にとってその状況は絶望的だったわけです。
>かなり息のある状態で火を放ったのなら、直接の死因は焼死に
>なってしまうので、これも問題の前提と外れませんか?
これは私も作成中に考えたのですが、問題に直接影響無いと考えこのようになりました。
焼死でないのなら「かなり息のある状態」ではなかったのでしょうね。
火を放って、そこですぐに力尽き息絶えたのだと思います。
瀕死で今にも死にそうだったからこそ、焼死とか自分が助かる可能性などを考えずに
自分は死ぬだろうけど犯人の思い通りにはさせたくないと考え至ったのです。
※ 問題中に使用されている人名、地域名、会社名、組織名、製品名、イベントなどは架空のものであり、実在に存在するものを示すものではありません。