物語を推理する
SHO ◆wZvmj0BI (2005/03/18(Fri) 23:04:07)
ある小説から、こんな文章をのせてみます。
「まい、悪いけれどしばらく台所へ行っていてちょうだい。」
まいは黙って言われたとおりにした。おばあちゃんが死んだという悲しさより、もう取り返しがつかないという恐ろしい後悔の念が、どす黒いコールタールのように、まいの心を覆い始めていた。胸に深く長い刀傷がぱっくりと開き、まいの存在全てがその痛みで締め付けられているような感じだった。まいは、もう二度と今までと同じような朝を迎えることはできないと思った。
(中略)
そのとき突然、トントンと台所のドアを叩く音がした。まいは顔を上げた。ゲンジさんだった。まいはのろのろと立ち上がって、ドアを開けた。全ての感覚が自分から去り、何千枚ものオブラートで繭のように体を包まれているようだった。
ゲンジさんには、以前の威嚇するような横柄な態度は微塵も見られなかった。一回りも二回りも小さく見える身体を、折り曲げるようにして、何かを差し出した。
「これを、飾ってあげてくれんか。」
銀龍草だった。
まいは思わずあっと声を上げた。そして両手で受け取った。
「ここのじいさんが好きだったでの。わしは出来は悪かったけんど、良くしてもろうた。」
ゲンジさんは眼をしょぼしょぼさせて言った。よくみると、ゲンジさんは泣いているのだった。
「何かすることがあったら、ゆうてくれ。」
そう呟いて、立ち去ろうとしたが、ふと、足元に目を止めた。
「えらい、キュウリ草がようけ咲いとるのう。」
まいも気づいた。まいがヒメワスレナグサと呼んでいた花が、見事な一株になって、咲き誇っていた。
「これ、キュウリ草っていうんですか?」
思えば、これがまいが初めてゲンジさんに嫌悪感無しに話しかけた言葉だった。オブラートの繭にすっぽりと入っているように感じていたせいかもしれなかったけれど。
「そう呼んどるがの。」
ゲンジさんはうなずくと出ていった。
まいの手の中にあったのは、確かにあの銀龍草だった。銀細工のような不思議な花。二年ぶりで見るその花は、こんなときでさえ、まいの目をくぎづけにする。
まいはおばあちゃんがしていたように一輪差しに銀龍草を生け、おじいちゃんの写真の前に飾った。
それから、あの懐かしいヒメワスレナグサにも水をやりに台所のドアの間に行き、腰をかがめ、何気なくあの汚れたガラスに目を遣った。そのとたん、電流に打たれたようなショックを感じて、そこに座り込んでしまった。
そのよごれたガラスには、小さな子がよくやるように、指か何かでなぞった跡があったのだ。
ニシノマジョ カラ ヒガシノマジョ ヘ
オバアチャン ノ タマシイ、ダッシュツ、ダイセイコウ
さっきはなかった、とまいは思った。さっき、ゲンジさんが来たときは。それとも、やっぱりあったのだろうか。気づかなかっただけなのだろうか。
(梨木香歩「西の魔女が死んだ」より)
さて、ここの掲示板の方々に推理していただきたいことは、ガラスの文字に何かトリックがあるのだとしたら、どんなトリックだと思いますか?
長くてしかもわかりにくくてごめんなさい。
小ばか (2005/03/19(Sat) 15:19:55)
SHOさん、こんにちわ。
実際にやってみていないので、あまり当てにならないのですが、
指で文字を書いておいて揮発性の液体を霧吹きで軽く吹きかけておけば
液体が蒸発するまではあまり目立たないのではないかと思います。
揮発性の液体はアルコールを考えてますが、少々臭いますので、
もっと適当な液体があると思います。(水でもできるかも)
乾くと透明になる接着剤も考えられるけど、明らかに跡が残りますから、
不適当でしょうね。
いいのかな? (2005/03/20(Sun) 04:04:39)
著作権法に引っかかると思うのですが・・・
(2005/03/20(Sun) 19:58:43)
119条ですね。(著作権)
気をつけてくださいよ。
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