家元殺人事件
有瀬 (2002/03/14(Thu) 18:48:33)
5月14日16時44分。真院水璃流家元の玉蘭 華蓮(ぎょくらん かれん)が京都市左京区にある自宅の客間で頭から血を流して死んでいるのを、住み込み手伝いの京香(きょうか)によって発見された。被害者の着衣には乱れた様子がなく、特に争った形跡もないことから、顔見知りの犯行と推測された。ただ一つ不審な点があり、固く閉ざされた被害者の口の中には「ボタン」が入っていたのだ。司法解剖の結果、鈍器のようなもので頭部を殴られたことによる脳挫傷が直接的な死因であるが、即死ではなくしばらくは意識があったらしい。従って口内で発見されたボタンは被害者自身によって入れられた可能性が高いという。死亡推定時刻は15時を中心とする前後30分であった。また凶器は、被害者の傍らに転がっていた壺と断定された。
京香の証言によると、被害者には15時に客が来る予定になっていたが、京香には客の名前は告げられていなかったという。また京香は被害者から用事を頼まれ、14時過ぎから16時半過ぎまで外出していたということだった。
後日捜査によって、華蓮には真院水璃流の運営にあたり複数の人物とトラブルがあったことが明らかとなった。いずれの人物も犯行当日の14時半から15時半までの間に明確な不在証明(アリバイ)はなかった。しかしながら、犯人決め手の有力な手がかりになると思われたボタンも特に捜査を進展させる材料にはならず、容疑者5名の中から犯人を特定するには至らなかった。
<容疑者一覧>
氏 名(し めい)「職業。被害者との関係。当日の姿。」
榊原 空雲(さかきばら からぐも)「陶芸家。華蓮の元亭主。袴姿。」
八尋 初音(やひろ はつね)「古美術商。華蓮に道具を販売。スーツ姿。」
伊集院 黎羽(いじゅういん れいは)「着物問屋。華蓮に着物を販売。着流し姿。」
牛坊 丹蓮(うしのぼう にれん)「真院水璃流師範。華蓮の片腕。着物姿。」
金城 山明(かねしろ さんめい)「無職。華蓮の若い恋人。スーツ姿。」
さて、みなさん!
被害者が残したダイイングメッセージの意味を解き、
容疑者の中から見事犯人を指摘して下さい!
有瀬 (2002/03/14(Thu) 18:56:55)
追加情報です。
被害者「玉蘭 華蓮」には洋服を着る習慣がなく、
事件当日も友禅の着物を着ていた。
以上です。
たき (2002/03/14(Thu) 20:24:06)
牛坊 丹蓮が犯人。
ボタンは牡丹を示した暗号だったんじゃないか。
牛と坊の土編で牡、丹蓮の丹で
牛坊 丹蓮となる。
有瀬 (2002/03/14(Thu) 23:23:10)
たきさん、正解です!お見事です。
犯人は「牛坊 丹蓮」です。
さて…。
ダイイングメッセージの意味と犯人は判明しましたが、
この物語には、実はもう一つの謎が隠されています。
引き続き、推理して下さると幸いです。
ということで、
解決のチェックはまだつけません(笑)。
Z (2002/03/14(Thu) 23:34:11)
当日も「玉蘭 華蓮」は着物を着ていて、
犯人の「牛坊 丹蓮」も着物姿だったのに、
どこからボタンを取ってきて口に入れたのか、というのが謎?
推理系の方は苦手なので全然自信ありません…
ともくん (2002/03/15(Fri) 00:09:13)
玉蘭がボタンを持っていたのは14時過ぎから金城と逢い引きしていた
からである。その時に偶然にボタンがとれてしまったので後でつけてあげる
ために持っていた。
しかし15時に牛坊と会う約束があったのでしばらく待ってもらうつもり
だったが殺されてしまった。
金城は牛坊が犯人と当然知っていたわけだが、何も証言しなかったのは、
金城と牛坊はできていて真院水璃流を乗っ取ろうとしていたからだ。
有瀬 (2002/03/15(Fri) 11:55:41)
-->Zさん
おっしゃるとおりです。
それがもう一つの謎です(笑)。
-->ともくんさん
綺麗な推理ですね!
与えられた情報を使って、
矛盾なく説明していると思います。
ただ唯一気になる点と言えば、
もし「金城 山明」のボタンが発見されていたなら、
アリバイがなく、動機があり、物的証拠もあるわけですから、
彼自身が犯人として逮捕されるような気がします…。
みなさん、もうしばらくお付き合い下さい(笑)。
大胆な発想と華麗な推理を楽しみにしています。
かめ (2002/03/15(Fri) 16:11:25)
有瀬さんの文章はきれいですねぇ。事件の様子がアリアリと浮かんでくるようです。
ところで、「ボタン」は花の「牡丹」だったてのはどうでしょう。
凶器の壷に生けてあったというわけです。
もしくは、何らかの機械のスイッチとしての「ボタン」。
現場に元からあったものだったから、捜査を進展させる材料にはならなかったという
のはどうでしょう。。違いますね。。。
有瀬 (2002/03/15(Fri) 19:35:15)
-->かめさん
お見事です!!
被害者が口に入れたボタンは、牡丹の暗示なのではなく、
牡丹(の花)そのものだったのです!
たきさん、Zさん、ともくんさん、かめさんをはじめとして、
この問題を考えて下さったみなさんに、心から感謝致します。
では、解決編を…。
*****
事件から3週間が経過した。『華道・家元殺人事件』として世の中を騒がしたこの事件も、やっと解決する日がやってきた。捜査当局は、遅々として進まない捜査状況を鑑みて、今回新たにインターネットを利用して大規模に情報提供を募り、見事有力な情報を手にすることができた。某推理系ホームページ内の掲示板を利用し、犯人特定に繋がるダイイングメッセージの謎を解き明かしたのだった。被害者が残した「ボタン(牡丹)」から「牛土 丹」「牛土方 丹禅」と推理していくことで、「牛坊 丹禅」を犯人と特定することができたのだった。
以下、牛坊の取り調べの様子を記す。
捜査官:「事件当日はどのような用件で被害者宅を訪れたのかね?」
牛坊:「家元は近々後継者をお決めになるということでした。私は家元の下で真院水璃流の師範として長くお仕えしておりました。それなのに、私よりも経験が浅く腕も未熟な子を後継者にする、という噂を耳にしたのです。私にはそれが許せなかった…。それで、抗議しようと家元の家に伺ったのです。」
捜査官:「なるほど。それで、被害者は何と言ったのかね?」
牛坊:「家元は、『丹禅はこれまで良くやってくれたわ。そのことは高く評価してる。でも、後継者を決めるにあたっては、他の者も含めて公平に決めたいの。わかってくれるでしょ?明日行われる定例会で発表したいと考えてるわ。発表の仕方に少し凝ってみようかと思っているのだけど…。』と、何か含みのある顔で私に笑いかけてきたのです。そのとき私は悟りました。私は後継者に選ばれなかったと…。気づいたときには、家元が生けていた壺を手に立ち尽くしていました。そして、傍らに頭から血を流して倒れている家元を目にしたのです。怖くなった私は壺についた指紋を消すと、そのまま部屋を後にしました…。」
捜査官:「なるほど。では、被害者が事件直前に生けていた花を知っているかね?」
牛坊:「いいえ。あのときは周りを見る余裕がまったくなくて…。」
捜査官:「うむ。ダイイングメッセージとなったボタンの詳細については、捜査の関係上、報道各社には伏せられていたのだがね。実は服のボタンではなく「牡丹(の花)」だったのだよ。これから話すことはあくまで私の推測だがね。もしかしたら、家元は翌日の定例会で「生け花」を使って後継者を発表しようと思っていたのではないのかね。つまり「牡丹の花」を生けることによって「牛坊 丹禅」つまり君を後継者に指名するつもりだった、と考えられないかね?」
牛坊:「そ、そんな…。あのとき家元は牡丹を…?まさか、私を後継者に…?そんな…家元……。」
捜査官:「以上で取り調べを終了する。」
*****
たき (2002/03/15(Fri) 21:05:46)
きちんと、解決編まで作ってくれるとは・・。
素晴らしい。
有瀬 (2002/03/16(Sat) 21:22:09)
> きちんと、解決編まで作ってくれるとは・・。
> 素晴らしい。
恐縮です(照)。
今回ストーリー重視で作成してみたのですが、
その分謎解きの部分が貧弱だったかもしれません…(苦笑)。
※ 問題中に使用されている人名、地域名、会社名、組織名、製品名、イベントなどは架空のものであり、実在に存在するものを示すものではありません。