変装が出来ない
海人 (2004/09/10(Fri) 10:26:50)
石垣 誠は某有名会社に勤めるエリートサラリーマンである。今年で46才になるのだが、女子社員からは30代に見えると言われている。
「部長、いつも若々しいですね」
「そうか? あは、あは、あはははは」
気味悪いと言われていたこの笑い方も、今ではチャームポイントの一つである。
石垣は順調に出世をし、部長までこぎつけた。生活でも順風満帆、愛する家族を持ち幸せいっぱいであった。しかしそれが、全て崩壊しようとしている。石垣は今、人を殺してしまったのだ。
10分前の出来事が頭の中でぐるぐると回っていた。
外回りに行こうとする石垣を柳川が呼びつけた。柳川は石垣と同期なのだが、石垣以上の才能で専務まで昇りつめていた。
専務の部屋へ行き、今度やるプロジェクトの話をしていたが、5分も経たぬうちに口論となった。とは言っても、言い争いはいつものことである。考え方が根本的に違うのだ。しかし、今日はいつも以上に激しかった。柳川が石垣を罵倒したところで、石垣の理性が吹っ飛んだ。
気が付くと、首を絞められ倒れている柳川がいた。
動かなくなった柳川を横に、石垣は必死に考えていた。
(に、逃げよう。あぁダメだ。外に出るには一階の広いロビーを通らなければならない…。顔でも見られたら終わりだ…。へ、変装…、いや、変装道具なんてここにはないし…)
石垣は焦っていた。時間をかけている余裕などないのだ。
幸い専務室を出てもこの階は他に部屋がない。誰にも会わずにエレベーターで降りられるのだ。問題は一階に降りた時である。人の出入りが多いロビーである。確実に見られてしまう。
(どうしようか…。そういえば、一瞬の出来事だと人の記憶はあやふやだとニュースで言ってたな…。他に方法はない、それに賭けるしかないか…)
石垣は柳川のコートがかかっているのを見付けた。
(いいぞ、この灰色のコートを羽織れば少しはマシか。あとはもうありのままで行くしかないな…)
石垣はそう決心し、エレベーターの一階を押した。
チン
一階へ着くと同時に、コートのエリで顔を隠しながら石垣は走った。その怪しい姿はロビーにいた全員目撃した。
5分後、石垣は何食わぬ顔で会社へ入った。案の定ロビーはざわついており、石垣はすました顔で受付嬢に聞いた。
「いや〜、外回りに行こうとしたら忘れ物に気付いてね。戻ってきたよ。ん? どうしたの? 何かあったの?」
「あ、石垣部長。大変です! 柳川専務が殺されたらしいんです ! 私、さっき不審者が走り去るのを見ました」
「柳川が!? ホントか? それで、警察は呼んだ?」
「はい」
そういうと、サイレンの音が聞こえてきた。
石垣の思惑通り、証言はまちまちであった。30人ほど目撃者がいたが、100%自信のある者はいなかった。警察はその中でも証言が多かったものをリストに挙げた。
・けっこうおじさんだった。50才以上ぐらい(?)
・灰色のコートを着ていた。
「背格好は?」と警察が受付嬢に聞いた時、その受付嬢は石垣を指差した。石垣の顔が真っ青になる。
「ちょうど石垣部長と同じぐらいだったと思います。けっこう背格好は似ています。でも絶対に石垣部長ではないですよ」
受付嬢は笑いながら言った。
「ほぅ、それは何故?」
「全然違いましたもん! ねー」
もうひとりの受付嬢も笑いながらうんうんと頷いていた。
さて、石垣はどうやって切り抜けたのだろうか。
瞬殺覚悟です^^;
aki (2004/09/10(Fri) 10:39:09)
> あとはもうありのままで行くしかないな…
カツラだったのでしょうか。。。^^;?
海人 (2004/09/10(Fri) 10:50:24)
ぎょえ〜〜〜〜〜。
覚悟はしていたが、瞬殺お見事!
大正解です!!(泣)
そうです、もう彼は「変装」をしていたんですね^^;
皆は「変装」をしている彼しか知らなかったので。
では結果。
aki刑事がおもむろに、石垣の髪の毛をむんずとつかんだ。
「あ!」
石垣は慌てて押さえようとした、が遅かった。形の整った髪の毛が頭から離れていった。そしておでこから頭のてっぺんまで、石垣のきれいな「肌」が露(あらわ)になった。
周りは一瞬凍りついたが、一斉に指を差し叫んだ。
「私が見たのはこのハゲです!」
完
にゃん (2004/09/10(Fri) 10:59:03)
海人さん、どうもぉ〜・・・ってもう終わってるし!!
ちょっと油断して某サイトの絵日記「イギリス旅行」を読んで
ニヤけている隙にΣ(=□=)!!
/ (2004/09/10(Fri) 10:57:45)
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