密室・必然
錠前屋 (2005/08/12(Fri) 00:22:00)
はじめまして。錠前屋です。ミステリが好きで、自分でも色々考えてみたりしますが、うまくまとまらなかったりします(笑)。ここの皆さんの発言等々を見ていると、何とレベルの高い人たちか、と思ってしまいます。(ちなみに、この問題はポール・アルテの「死が招く」から着想を得ていますので、似ている部分が多々ありますが、「死が招く」とは、トリックなど、全く関係ないので、ご安心を)
「全ての密室は、その密室が必然的に作られなければならなく、絶対に偶然によって作られてはいけないのです」
「その通り」
探偵小説家のマンネンヒツ(仮名)と、その友人であるキキジョウズ(仮名)が二階のキキジョウズの部屋で探偵小説について議論していた。しかし、論題を投げかけたり、それに答えたりするのはマンネンヒツで、キキジョウズはその名のとおり、上手に相槌をうちながら、それを聞いているだけであった。
「おや?」と、キキジョウズ。
「どうかしましたか?」
「窓の外を、何かが飛んで行ったような・・?」
「どうせ、鳥か何かでしょう。それにしても昨今のミステリときたら・・」
感情を表に出さない婦人、ツララ(仮名)は庭へ出て、お茶を飲んでいた。その近くで、画家の女、パレット(仮名)が庭の風景をスケッチしていた。
(美人な女だ・・)ツララは思った。それにひきかえ、自分はなんと醜いのだろう。夫が死んで、女手一つで育ててきた中学生の息子も、数年前、事故で死んでしまった。
(味気の無い庭だわ・・良い絵も描けられやしない・・)画家のパレットは思った。
(美人な女だ・・)酒瓶を持った男、アルハラ(仮名)は思った。もちろん、パレットのことである。
(嫌だわ、あの飲んだくれ、また私のほうを見ている)パレットは思った。
突然、ナイフが飛んできて、庭の木に突き刺さった。
「やあ」この下宿屋の主人、ダンナ(仮名)だった。「昔、奇術師をしていたんだ。どう?なかなかうまいでしょう」
「まあ、あぶない!」パレットは叫んだ。ツララは何も言わなかった。アルハラは酒瓶の中身をぐびぐびと飲んだ。
次の日の朝、ダンナの妻、オカミ(仮名)は、届けられた手紙を渡すべく、医者のドラッグ(仮名)のいる三階の部屋まで、上っていった。
「ドラッグさん、ドラッグさん!」どんどんとドアをたたく。
「昨日から一歩も部屋を出ていないみたいだけれど、今日みたいないいお天気の日は、外に出ないと体に毒ですよ!あと、お手紙を・・」
さらにドアをたたくが、返事は無い。ノブを回すが、開かない。どうやら、内側から鍵が掛かっているらしい。
「困ったわ、ドラッグさんたら、いつもドアに鍵をかけて、しかも合鍵も全部中へもっていってしまうのだから」
そこへ、小説家のマンネンヒツがやってきた。
「どうしました?え?ほうほう?返事が無い?まあ、鍵をかけて部屋にこもるのはドラッグさんの場合、いつものことだから・・うむっ!確かに鍵が掛かっている!合鍵は?無い?これは、これは!こいつはきっと密室殺人だ!今すぐドアを破りましょう!」言うが早いか、マンネンヒツはドガドガとドアをたたき始めた。
「やめてくださいな!ドアが壊れてしまう!」
「何事か?」そこへ、ダンナがやってきた。
「何々?密室殺人?それはすごい!今すぐドアを破りましょう!」一緒になって、ドアを破り始めた。ドアはみしみし鳴り、ついに破れた。三人は部屋の中に入った。
「ドラッグさん!」オカミが叫ぶ。ドラッグは仕切りの無い部屋の床に倒れていた。部屋の隅に、小さな瓶が転がっている。
「死んでますな」マンネンヒツが冷静に言う。
「おそらく、青酸カリでしょう。ほれ、そこに」転がっている瓶には、「青酸カリ」のラベルが貼ってある。
「ドアには鍵が掛かっていた。一つしかない窓には」死体の近くにある窓に近寄り、開けようとするが、開かない。鍵が掛かっている。
「合鍵は全部そこの机の上に束になってある。この通りだ。自殺でしょう」
「密室殺人だ!」小説家が叫ぶ。
「でもね、マンネンヒツさん、さっきはつい、乗せられてしまいましたが、こう完璧な密室だと、文句のつけ様が無い・・ん?何だ、これは?」
窓の側には、液体とスプーンの入った、小さなガラスのコップが一つ。
続きます。長くてすみません。
錠前屋 (2005/08/12(Fri) 00:25:37)
「では、こういうことですね?」警部は言う。場所は下宿屋の応接間。
「オカミさんが朝、手紙を届けようと、ドクター・ドラッグの部屋に行った
はいいが、鍵が開かない。しばらくすると、小説家のマンネンヒツさんがや
って来た。彼も鍵が掛かっていることを確認する。それから、心配になって
、ドアを破ろうとする」
「この人は楽しんでいましたよ」オカミがいう。
「まあ、とにかく、そこへダンナさんがきたわけだ。三人でドアを破って中
に入ると・・」
「私は、破りませんでしたよ」オカミがいう。
「わかりました。そして、三人で中に入り、死体発見・・っと。こりゃ、自
殺かもしれませんな。窓とドアに鍵が掛かっていた。ドアの合鍵は全部中に
あったんでしょう?完全な密室です。青酸カリの瓶からは被害者の指紋も検
出されています。気になるのは、何で青酸カリを自ら嗅いだ後、瓶の蓋を閉
めなければならなかったのか・・自殺なら、そんなことするでしょうか?そ
れと、あの塩水の入ったガラスのコップです。なぜ、あんなものが置かれて
いたのか。なぜ、スプーンが入れられていたのか?その理由が分かりません
。コップの外に、塩がいくらかこぼれています。この場で塩水を作ったこと
は確かです。一体、誰が、何の目的で作ったのか・・。おい、死亡推定時刻
は確認できたか。うむ、そうか・・昨日の午後一時から三時の間。えらく狭
められたな。正確なのか、これは?うむ、そうか・・。すみませんがオカミ
さん、昨日の午後一時から三時までの間、何をしてらっしゃいましたか?」
「私は二時ごろから買い出しに町へ・・あっ、私、二時少し前にドラッグさ
んの部屋に行きました。最近眠れないもので、睡眠薬を少々もらいに。その
時は、生きていました」
「ああ、そうですか。では、死亡推定時刻は二時から三時までの間というこ
とになります。ところで、ダンナさん、あなたは?」
「私は、庭で、ツララ婦人、画家のパレットさん、それとアルハラさんと一
緒でした」
「それは確かですか?」
「はい、全員、三時半ごろまで、私はツララさんと話し、パレットさんは写
生に夢中、アルハラさんは酒を飲んでグースカ寝ていましたよ」
「それなら、あなた方のアリバイはほぼ、確定的ですな。ああいや、疑って
いるわけでは・・・それと、マンネンヒツさん、あなたは?」
「キキジョウズさんの部屋で、彼と話していました。探偵小説について」
「彼の部屋は?」
「二階の・・ええと、この部屋の真下の部屋です」
「真下ね・・」
「そういえば、彼が話している最中に何か妙なものが窓の外を飛んでいくの
を見たと言いました」
「そうかね、後で聞いてみよう」
しかし、この時、この話を、悪意を持って聞いていた人間がいたとは、警部
は気づかなかった。果たして、その人間がドアの外で聞き耳を立てていたの
か、それともこの部屋にいたのか、ここでは触れないことにしよう。
「もう一つ、不振な点があるのです」警部が言う。
「先ほどのコップの件ですが、似たような事件が一年前の冬、起こっている
のですよ。鍵の掛かった部屋の中で人が青酸中毒で死亡し、窓の側に塩水と
スプーンの入ったコップが置かれていた事件が。偶然とは思えんのです」
続きます。
錠前屋 (2005/08/12(Fri) 00:29:24)
「私は何も知りません。庭でダンナさんと話していました」と、ツラ
ラは言う。
「そうですか。どうも。この事件に似た事件が過去に起こっているん
ですが、覚えてらっしゃいますか?」
「ああ、あの、小説家か何かの人が服毒自殺を図ったとか言う事件で
すか?あの時は、ちょっとした見出しになっていたわねぇ。密室殺人
だとかなんだとか言って。結局、あれは自殺だったんでしょう?」
「はあ、まあ。それと、この事件について、どうお考えですか?」
「何も。ただ、人が私の目の前で死んでいくのは、耐え難いものがあ
ります。私の夫も、息子も、私のほんの目と鼻の先で死んでいった・・」
「息子さん、お亡くなりになったんですか・・」警部は、小さな男の
子が写った写真を見つめる。遺品なのか、学校で使っていたと思われ
る教科書などが並んでいる。
「交通事故で。病院に運んだんですけど、間に合わなくて。中学三年
生で、もうじき卒業を向えるころでした。夫は病気で逝きました。末
期癌だったのです・・」
「それでは、今回の事件で、さぞかしショックを受けていらっしゃる
でしょう。お悔やみ申し上げます」
「どうも」
「それと奥さん、あの飲んだくれだとか言う男、アルハラさんでした
っけ?あの時、寝ていたようですが、あの場を離れなかったのは本当
ですか?」
「ええ、ずっといびきをかいて寝ていました」
「最後に、この事件、本当に自殺だと思いますか?」
「先ほど申しました。私は何も知りません」
「俺はやってねぇよ!警部さん!あの医者は自殺なんだろ?」と、ア
ルハラは言う。
「俺は確か、一時過ぎごろから酒を飲んで、ふらふらぁっと庭へ出て・・気が
ついたらダンナさんに家へ運び込まれていた」
「まあ、他の方々の裏づけもあります。信じましょう。ところで、一
年前の冬、今回の事件とよく似た事件が起きたのですが・・覚えてら
っしゃいますか?」
アルハラは、心底ビックリしたようだった。
「何?一年前の冬に似たような事件?それは・・それはまさに推理小
説のような展開じゃないか?あ、俺はそんなことは知らなかったよ、あまり新聞を読まないので・・」
「とぼけても無駄ですよ、こっちはちゃんと調べてあるのです。あな
たは傷害致死の罪に問われ、今年の初めまで、二年間、刑務所暮らし
でしたね。だから何も知らないのでしょう」
アルハラはうろたえた。
「そ、そうだよ。でも、あれは俺が悪いんじゃねぇ」
「まあ、そうですね。あなたはあの日、道を歩いていた。手には、大
金の入った鞄。どうやらあなたは数日前、叔父さんが死んで、ちょっ
とした大金を手にしたようです。その金を金庫か何かに預けに行く途
中でした。しかし、そこへ一人の男が走ってきて、あなたの鞄を奪っ
て行った。あなたは男を追いかけ、捕まえた」
「そうよ。そんで俺は『鞄はどこにやった?』と訊いたんだ。そした
らあの野郎、『もう、仲間に渡しちまったよ』なんていいやがる。思
わず一発殴ったら、倒れたときに当たり所が悪かったらしくて、その
ままお陀仏さ。そんで俺はブタバコ行きよ。金は戻ってこねぇし、ま
ったく、踏んだりけったりとはこのことだ!」
「叔父さんの残した金は、どのくらいだったかね?」
「五百万ほど。あの時預けに行ったのは四百万だったから、五分の四、盗
られたんだ」
「あなたの叔父さんの死因はなんだったのですか?」
「け、け、警部さん!まさかあんた、あの愛すべき叔父さんまでこの
俺が殺したなんておっしゃるんじゃないでしょう!叔父さんの死因は
俺にもよく分からねぇんです。主治医のやつは、何だか長ったらしい
名前を言っていましたが・・」
「まあ、良い。では君は、今回の事件では何も知らないのだね?」
「はあ、そうです」
「ありがとう。それでは、失礼するよ。それと、わざと馬鹿な人間の
ふりをするのは止めたほうがいい。思うに、君はなかなか良い教育を
受けてきたようだね」
警部は出て行った。アルハラはふうとため息をついた。
「あのくそったれポリ公が。ひやひやさせやがって・・」
「早く終わらせてくれないかしら?早くこの絵を完成させたいのよ」
「まあ、まあ、こっちも仕事ですから・・では、昨日の午後二時ごろ
から三時ごろまで何をやっていましたか?」
「庭のスケッチよ。全く、あの庭ったら、題材にならないわ。良い絵
が描けなかった。まあ、庭が良かったところで、あの飲んだくれがい
たから集中できなかったけれど。あと、飛んできたナイフにはビック
リしたわ。ダンナさん、昔は奇術師をしていたから大丈夫だっていっ
ていたけど、やっぱり危ないわ」
「へえ、そんなことがあったんですか。ところで、一年前の冬、今回
の意見とよく似た事件があったんですが、覚えてらっしゃる?」
「えっと・・ああ、あの推理作家が自宅で死んだやつ!確か窓に塩水
とスプーンの入ったコップがおいてあったのよね。まあ!昨日の事件
とそっくり!推理小説みたいね!」
「ええ、そうです。ですが、現実は小説より奇なりとも言いますよ」
「そうね。でも、今回の事件とは、ぜんぜん関係が無いんでしょ。だ
ったらいいじゃない」「まあ、そうですね。最後に、あなた、最近に
なって画家の仕事を始めたらしいですが、その前は何をしてらっしゃ
ったのですか?」
「・・色々なところを点々として働いて、どうにか生計を立てていま
した。まとまったお金をもらうようになったのは、画家になってから
です。結構、色々なところから、仕事の依頼が来るんですよ。さあ、早
く仕事にかからねばなりません!もうお話は終りでしょ!私は忙しいのよ!」
続きます。長くて本当にすみません。
錠前屋 (2005/08/12(Fri) 00:33:28)
「誰が怪しいと思います?元奇術師の下宿屋の主人、その妻、息子を
なくし、氷のように冷たい心の婦人、飲んだくれのろくでなしだが、
良い教育を受けてきた男、最近仕事が増えている駆け出しの画家、推
理作家・・どいつもこいつも怪しく見えますね」
「もう一人いるよ、空飛ぶ物体の目撃者、キキジョウズさんがね」
警部は二階のキキジョウズの部屋のドアを開けようとしたが、開かな
かった。内側から鍵が掛かっている。
「キキジョウズさん!」警部は激しくドアをたたいたが、返事は無い。
警部はダンナを呼んだ。
「すみません。合鍵を・・」
「いや、キキジョウズさんもドラッグさんと同じで、合鍵を全部自室
の中にしまっていらっしゃるのです」
「すみません、修理代は私が負担しますので、このドアを破らせてい
ただけないでしょうか。嫌な予感がするのです」言うが早いか、警部
は巨体をドアにぶつけた。他の警官も手伝って、ドアを破った。
キキジョウズは死んでいた。床に倒れ、部屋の隅に青酸カリの入った
瓶が転がっていた。
「窓にも鍵がかかっている。合鍵は机の上においてある。自殺か・・?
いや、二日の間に二人も同じ建物の中で死人が出るなんて、偶然とは
考えにくい・・あっ、これは何だ?」
部屋の窓の側には、またもや塩水とスプーンが入ったガラスのコップ
が置かれていた。
「おそらく、キキジョウズさんが目撃したことは、何らかの意味があ
ったのだ。それで、キキジョウズさんは殺されたのだ。ドラッグ殺し
と同じ方法で。そして、犯人はこの下宿内にいるのだ・・」
『推理作家エドポー事件』19XX年
この事件は、19XX年、12月20日、推理作家エドポーが自宅の自室で青
酸カリによる服毒自殺をしているのが発見されたものである。
故人が生きていることが最後に確認されたのは、死体発見の前日、12
月19日の午後一時、昼食を個人の自室まで運んできた家政婦によって
であった。(ちなみに、エドポーは当時、この家政婦を一人、家にお
いていた)その日、個人が会ったと思われるのは、同日午前十一時ご
ろに訪ねてきた雑誌編集部のライト一人だけである。ライトは故人と
新作の小説について話し合った後、十二時半ごろ家を辞したと証言し
ている。(家政婦の裏づけあり。また、18日の夜に降り積もった雪に、
ライトと家政婦の足跡だけしか残されていなかったことが、その日、
他に訪問客がいなかったことを示している)
その後、一時に家政婦が故人に昼食を届け、その際、「今日は部屋に
こもりっきりで仕事をするから、もう来なくてもよい。夕食も持って
こなくて良い。朝食はいつもの時間(午前十時)に」といわれた、自
室に鍵をかけてこもるのはいつものことだったので、特に妙だとは感
じなかったと証言している。
その後、翌日20日の朝十時、家政婦が朝食を持ってきても返事が無い。
合鍵は勝手に入る者がいては困るというので、故人が全て処分してしま
い、一つしかなく、その一つも故人がいつも持っていたという。家政
婦は知り合いの錠前屋に頼んで来てもらい、十一時ごろ、部屋の中に
入って、床に転がっている死体を見つけた。
死亡推定時刻は19日の午後二時半から四時の間(その間、友人の家に
いた家政婦と、編集部にいたライトはアリバイ確定)。青酸カリの入
った瓶からは故人の指紋が検出された。
奇妙なのは、死体の近くにある部屋唯一のドアの側に、塩水とスプーン
の入ったガラスのコップが置いてあったことだ。塩がコップの周りに
こぼれていることから、その場で塩水を作ったものと推定される。し
かし、一体誰が何の目的で?
また、青酸カリの瓶の蓋が閉められていることも奇妙である。
しかし、この事件中、もっとも奇妙なことは、この事件の現場の状態
が、彼が当時執筆中だった小説、『密室の必然性』の内容と全く同じ
だったということである。この小説には、被害者が密室の中で青酸カ
リを飲んで死亡し、その部屋の窓の側には塩水とスプーンの入ったガ
ラスのコップが置かれている、というシーンが登場する。まだ解決編
は書かれていなかったので、故人がこのガラスのコップにどのような
意味を持たせるつもりだったかは、定かではない。編集部のライトも、この新作小説の結末については、故人から何も聞かされていなかった、とのこと。
警察当局は、この事件を、当時小説のネタにつまっていた故人が自分
の未完成著作になぞらえて自殺したものとして、捜査を打ち切った。
ちなみに、ライトは編集部に勤め続けており、家政婦のほうは、音信
不通となっている。
警部は一年前のエドポー事件の簡単な資料を読み終わって、ため息をついた。
似ている。まったくもって、似ている。違うことといえば、容疑者の
数と、雪が降っているかいないかだけではないか?
はじめから考えてみよう。去年の冬、事件が起きた。そして、今年も
また、事件が起きた。二つの事件の関連性は、分かっている限りでは、
全く無い。しかし、現場の状況は、非常によく似ている。
塩水とスプーンの入ったカップ、青酸カリの瓶、密室、引きこもりが
ちの死者。
だめだ!こんがらがってくる!大体、別人による殺人だとして、こん
な手の込んだ、わけの分からない模倣をやらかすやつがあるか?全く
意味が無い!偶然だとも思えない!
そういえば、あの死んだ作家が書いていた小説のタイトルは何だった
か。そう、『密室の必然性』。密室の・・・。
『必然』。はっと警部の頭の中にこの言葉がひらめいた。そうだ、必然
だ、偶然ではありえない。ならば必然なのだ。二つの酷似した事件。
それらが起こったのは必然的でなければならぬ。偶然であってはなら
ぬ。ばかげた模倣であってはならぬ。
続きます。長くてほんとにもう・・(涙)
錠前屋 (2005/08/12(Fri) 00:36:58)
警部は庭へ出た。事件の日、四人の人間がいた庭である。そこには、
六つの椅子と四つのテーブルが置いてあった。上を見ると、下から二
つ窓が並んでいるのが見える。下が二階の「目撃者」キキジョウズの
部屋の窓。上が三階のドラッグの部屋の窓だった。
「あの窓の側に、ガラスのコップが置いてあったのか・・」警部はつ
ぶやく。
そこへ、たくさんの紙が風に乗って飛んできた。
「ああっ、警部さん、集めて、集めてください!」パレットが慌てて
走ってきた。
警部は散らばった紙を集めて渡してやった。たくさんの紙に、この庭
のスケッチが描かれている。
「うまいもんですなぁ」警部は感心する。
「でも、この庭自体がいまいひとつで。モデルが悪いと、絵にも影響
しますから」
「それにしたって、うまいですよ。これは、事件のあった日にこの庭
で描いていたスケッチですね・・おや、何ですか、これは?」
警部が指差したところは、丁度陰っているところをスケッチしたもの
で、その影の真ん中に、何か淡い黄色の点が描かれている。
「あれ?これ、何でしょう?ごめんなさい、絵を描くのに夢中だった
から、無意識に描きこんでしまったのだと思うわ。全然、覚えが無い
から。それにしても、この黄色の点は何?」
「その絵に描かれているのは、丁度このあたりですね。なるほど、草
木が密集していて、いつでも陰っているようだ。でも、黄色い点なん
か無いぞ・・ううむ!この部分は、丁度、ドラッグさん、キキジョウ
ズさんの窓と直線で結ぶことができる位置にある!これは暗示的だ!
故人の死亡時刻ごろに現れて、その後、煙のごとく消え去った、淡い
黄色の点!」
「ああ、君、例のガラスコップの周りにあった塩だが、食塩だったの
かね?」警部が鑑識の一人に尋ねる。
「いえ、食塩ではなく、カリウム塩でした」
「そうか、ありがとう。だが、そうすると、この密室のトリックなら、
誰にでもできることになる。それに、一年前との事件の関係は・・」
警部ははっとした。
「そうだ、必然だ、何もかも、一年前から全ては必然的な事だったんだ。
だとすると、犯人はおそらく、あの人だ・・」
「えっ!密室の謎が解けたんですか?」
「ああ、中学生程度の知識を持っていれば、誰にでもできる」
さて、密室の謎、犯人、動機、一年前の事件の真相とは?動機について
は、ほとんど推測となってくるのですが・・(汗)長ったらしいですが、
どうか答えてやってください。
線分ft (2005/08/13(Sat) 14:08:02)
こんばんは
長文お疲れ様です……凄いですねぇ……線分ftです。
(ところで、2レス目から文が左に寄っているのは何か訳が?)
さて、「中学生程度の知識」から考えて
化学反応関係のトリックだと思われるので
トリックを解くのは諦めました(え)
行間を読んで犯人を当てる邪法でいきます(をい)
(ドラッグ氏の事件)
>窓の側には、液体とスプーンの入った、小さなガラスのコップが一つ。
(エドポー氏の事件)
>奇妙なのは、死体の近くにある部屋唯一のドアの側に、
>塩水とスプーンの入ったガラスのコップが置いてあったことだ。
(パレットの証言)
>確か窓に塩水とスプーンの入ったコップがおいてあったのよね。
ここでパレットはエドポー氏の事件について発言している筈なのに
「窓に」、即ちドラッグ氏の事件の事を言っています。
普通に考えれば、警察はできるだけ事件の詳細を隠すでしょうから
容疑者の中でコップが置いてあったのが窓と知っているのは
マンネンヒツとダンナとオカミだけの筈です。
それにも関らず、ドラッグ氏の事件について知っているパレットが犯人。
おそらく、エドポーの家政婦、エドポー事件の犯人も同一。
……でも、警部もエドポー事件を
>窓の側に塩水とスプーンの入ったコップが置かれていた事件
と言ってしまっているのですよね……
ドラッグ氏の事件とエドポー事件の記憶が混じったのかな?
錠前屋 (2005/08/15(Mon) 16:09:08)
線分ftさん、はじめまして。
せっかく答えて下すって恐縮ですが、「エドポー事件」の部分の
「ドアの側のコップ」は、「窓の側のコップ」の間違いでした。
申し訳ありません。
(つまり、二つの事件コップの位置と様子は、全く同じということです)
パレットが事件のことを知っていたのは、もう、事件のことが詳しく下宿内に知れ渡っていたからだと考えてください。
ちなみに、文字が左によっているのは、こうしたほうが、
見やすいかな?と考えたからです。
それでは。
refrain (2005/08/28(Sun) 01:04:27)
2005/08/28(Sun) 01:12:35 編集(投稿者)
錠前屋さんはじめまして、こんばんは!
まだ見に来られてるでしょうか?
せっかくの長文問題ですので是非参戦をとは思っていたのですがある理由から
どう答えるべきか考えている内に遅くなりました。
これから書く事は推理ではなく想像です。
まず犯人はダンナさん。理由はキキジョウズさんの殺害理由からで、飛んでいた
物を見られただけでは犯人は判らないと思いますがそれを回収する所を
見られていれば危険です。同時刻頃そのような動きをしているのは飛んできた
ナイフを取りに来たダンナさんだけ。飛んでいた物はナイフでした。
次に動機は1年前は奇術のネタを勝手に小説に使われたうらみ。
ドラッグさんは青酸カリの入手経路としての口封じ。
一年前の事件の真相と密室の謎はハッキリ判りません。
最初に書いたある理由とはこの事でこの問題にはHNに似合わず「錠前」に
関する記述がありませんので部屋にあったスプーンと塩水の入ったコップは
実はスプーンの先に氷をつけたものとコップの中の水を凍らせたものを
塩でくっつけ、かなりの重量に耐えられるようにしてトリックに使われた物
だろうとゆう事以外は何も判りませんでした。
以上が私の答えです。
書き込みが少ないですが、これに懲りずにまた出題をお願いします!(^^)
えみい (2005/09/01(Thu) 11:48:27)
難しいですね。トリック、犯人どちらもわかりません。
ドラッグ、キキジョウズについては死因が青酸カリかどうかも書かれていませんよね。青酸カリと思わせて違う方法で殺害したのかな?
もう少し考えてみます。
あらい (2005/09/01(Thu) 13:52:27)
大変読み応えのある問題、お疲れさまです。
科学的素養に乏しいもので、適当な事を書いているかもしれませんが、
私の推理を披瀝させていただきます。
まず共犯はオカミ。
睡眠薬をもらいに行った際、その睡眠薬を被害者のカップに入れて、眠らせました。 被害者はオカミが退出したら、自然と鍵をかけます。
その後、睡眠薬の入った飲料を飲み、床に昏倒したのでしょう。
これが密室のトリック。
そして、手を下したのはダンナ。犯行は晴天の日だったのではないでしょうか?
窓辺にコップを仕込みます。(これをどうやって仕込んだかはわかりません。
もしかしたらオカミが風水的にいいんですよ。とかいって置いたのかも?)
ただし、中には青酸カリを溶かせ込ませて。
その後、庭からナイフを窓辺に投げつけます。
ナイフは太陽光を反射し、ガラスコップを照らします。
中に入っているスプーンにより、炎色反応?などの化学反応が起き、
青酸カリ+塩化カリウム水溶液から、青酸ガスが発生し、被害者は絶命。
パレットが描いた黄色い点は、ナイフの反射した光でした。
ギシギシと軋むようなボロ家のようですから、青酸ガスはすぐに薄められ、
死体発見時には、もはや致死量に満たなくなって、
発見者達は死なずにすんだのでしょう。
甚だ自信ないのですが、如何でしょうか?
動機についてはわかりません。
もしかしたら、庭にいた全員が被害者に恨みを持ち、全員が共犯なのかも
しれませんね。
※ 問題中に使用されている人名、地域名、会社名、組織名、製品名、イベントなどは架空のものであり、実在に存在するものを示すものではありません。