銃声にさめた
むた (2004/10/12(Tue) 23:26:36)
は陳舜臣さんの小説の題名ですな。思いつかなかったもので。(−−;まあ作品は盗作ではないので、挑戦を。すごく久しぶりのむた刑事シリーズ。まだ第4作目だ・・・。ではでは。
私は署内でも指折りに拳銃が下手なことで知られている。それはかまわない。撃たないで解決するにこしたことはないのだから。だが、実際には一度だけ現場で撃ったことがある。それは今でも苦い思い出として私の中に残っている。そう、あれは新人時代のことだった・・・・。
「なあ、むた。拳銃ってのは最後の手段だ。こんなものうまくても自慢にも何にもなりゃしない。」
酔うたびにこう言って私に絡んでいたのは私の上司で、全国でも指折りの銃の名手とうたわれた通称タカ警部だ。だが、私は彼が銃を握っているのを見たことがない。あんまり言われ耳にタコどころかイカやカニまで出来そうな気分になった私は思い切って理由を聞いてみた。なぜ、何度も同じことを言うのか、過去に何かあったのかと。何度も躊躇した挙句、彼は答えた
「昔、銀行強盗を撃ったんだ。弾は犯人に命中したんだがな・・・。銃の力が強すぎて・・・・。」
弾は貫通し、犯人の後ろで震えていた人質の女性に当たった。彼女は今も後遺症に苦しんでいるらしい。当時20歳くらいであったという。
「俺は新聞でずいぶんたたかれた。それはいい。あの子の傷に比べれば物の数ではないさ。でもな、むた。今でも胸にとげが刺さってる。そのとげは俺に語りかけるんだ。『正解は何ですか?』ってな・・・。」
私は答えられなかった。だが、それから一月後、考えてもいなかったのだが、自分がその問いに直面することになる。
仕事の合間を見て私は銀行にお金を下ろしに来たときに、銀行強盗にばったり会ってしまったのだ。私は彼らの死角をつきなんとか銀行のトイレに逃げ込んだ。彼は私の存在にまだ気がついてはいない。私はチャンスをうかがった。彼は女子行員を人質に取り、何か要求を叫んでいる。銀行の周りは警察によって包囲されたようだ。奴に近づいて人質さえ取り戻せば・・・。
その頃、銀行を包囲する警官たちをタカ警部が指揮していた。警官たちがそれぞれ報告する。
「中にむた刑事がいるようです。」
「あの馬鹿が。」
ちっと警部は舌打ちをする。
「しかし、警部。考えようによってはチャンスかもしれませんよ。犯人は単独犯ですし、彼がいくら射撃が下手でも至近距離からなら当たるでしょう。」
「バカもん!当たるだろうが、もし弾が貫通してみろ。まだ行内には人が残っているんだぞ。」
警部は珍しくうろたえていた。嫌な過去を思い出したのだろう。そして、中にいるのは自分よりはるかに銃の下手な私・・・。それでも警部は私にかけるしかなかったのだ。
私は意を決した。亀の子みたいにトイレの中で首をすくめているわけにはいかない。女子行員の顔は青ざめている。このままでは精神的に参ってしまう。ほかの人質だって時間の問題だろう。私は思い切ってトイレから飛び出し犯人の前に立った。銃を構える。
「その人を放せ。」
私は出来るだけゆっくりと相手にいうと一歩ずつ彼に近づく。
「来るな!」
犯人は、彼女を盾にして一歩ずつ後ずさりする。だが、距離は近い。この距離なら私でも当てられる。私でも?そうだ。近すぎる。私は銃を構えなおす。脳裏に貫通する弾丸がよぎる。警部が酔って話したあのシーンだ。何か遮蔽物があれば・・・。
「どうした、撃てねえか!この臆病者め!」
あざけるように犯人が叫ぶ。私は銃を構える。くぐもった銃声がし、犯人の右肩を打ち抜く。犯人も人質の女性も目を丸くして私を見ている。
「お前は鬼か!」
犯人は叫ぶ。女性の顔が青い。私の顔はもっと青くなっているだろう。私は天井に向かってもう一発撃った。その音を合図にして警官隊が突入してきた。私は安堵感から腰から崩れ落ちた。向こうから警部が私に駆け寄ってくる・・・。
「バカもん!無茶しおって!」
警部は泣いていた。犯人は逮捕された。弾丸は犯人の体の中でとまっていた。つまりほかの人質は無傷だったのだ。
「まったく何てことするんだ、お前は・・・。」
「遮蔽物ですよ、警部。」
私の笑顔がゆがむ。それを見て警部が言った。
「でもありがとな、むた。あのときの答えが見つかったよ。これでいつやめても悔いはない。」
すっきりした表情で警部が言った。警部がその言葉を実行したのはすべての手続きが終わった3日後のことであった。私は以来銃に触れてはいない。そして今度は私の心にとげが残った。
問題:むた刑事は何を遮蔽物にして犯人を撃ったのか?
ceiling-walker (2004/10/13(Wed) 00:08:27)
犯人に盾にされてた人質かなぁ〜。
でも、それだと正義の味方って感じじゃないですね^^;
考え直します〜。
Apollo (2004/10/13(Wed) 00:43:42)
ちゃーす。
むた刑事に切花の花束を贈ります。鉢植えを差し上げるわけにはいかないので。それとも通いで大丈夫なんですかね?
一見すると、ジャケットを脱いで遮蔽物に使ったなどの別解が色々出そうですが、むた刑事の様子から察するに答は一つですね。
遠まわしですいません。
海人 (2004/10/13(Wed) 07:00:15)
とても話が面白いです。すごい文章がお上手ですね。
食い入るように読んでしまいました。
今、何でオレのは文章が下手なんだと、ニコラス刑事に喝を入れています(笑)
答えは、もしかして…、シティハンターでやってたやつでは……?
> 私は以来銃に触れてはいない。
握れなくなったのではないでしょうか?
ρ_-)..。 (2004/10/13(Wed) 09:04:35)
あー!
私も文章読んで、すごく読みやすかったし、
文章うまいなぁ、と思っていました。
それで解答もしたかったのですが、
思いつかず…。
海人さんの解答を見て、やっとApolloさんの解答の
意味が分かり、また、
解答と文章のつじつまも合うようで、
なるほどー、と。
楽しめました♪
Vega (2004/10/13(Wed) 10:17:44)
おはようございます。
この問題、何かデジャヴュを感じると思ったらシティーハンターでしたか。そーかそーか。
というわけで、答えはApolloさん&海人さんと同じでお願いします(何)
まあ、利き手じゃないので業務に支障はないと思いますが、くれぐれもお大事にと
むた刑事にお伝え下さい(^^
にゃん (2004/10/13(Wed) 10:28:56)
な〜るほど。
シティハンターか・・・。ふむ。
Apolloさんの解答じゃ解らなかったけど海人さんのシティハンターで
解ってしまいましたよ。ふっふっふ。
むた刑事お大事に。
あなたは刑事の鏡です。
ヤマモト (2004/10/13(Wed) 10:40:28)
シティーハンター1巻だね
読んだ事あるだけにこれが一番最初に浮かぶ
でも本当は何かに当てて威力を弱めるんじゃなくて
腰とか骨の厚い所に当てればいいんだよ?
太股だって筋肉はかなりあるし。アハハハハw
というか手越しに撃ってしかも対象に弾を当てられるなんて、その時点で天才じゃないか
Z (2004/10/13(Wed) 10:47:58)
↑たしかに(爆)
矛盾しとるね
キョウ (2004/10/13(Wed) 11:09:18)
むたさん、どうも。
皆さんの解答と同じではつまらないので、
その日はボーナス日で、銀行で全額引き出した。
そこに強盗が!
自分の腕を遮蔽物にしようとしたが、その勇気が
なく、万札だらけで分厚くなった自分の財布を
遮蔽物にした。
犯人のみに銃弾が当り、ホッとしたが、万札は
粉々に・・・・・
飲み屋のツケやらなんやら全て支払えなくなった
むた刑事は、顔が青ざめた・・・・。
ヤマモトさんへ。
>距離は近い。この距離なら私でも当てられる。私でも?そうだ。近すぎる。
と本文にも書いてあるので、かなりの至近距離だったのでしょう。
し〜♪ (2004/10/13(Wed) 16:35:08)
すいませ〜ん
ちょっと分からないことがあるんですが・・・・・・
「遮蔽物」
↑なんて読むんですか?どういう意味ですか?
教えてくれるといいな〜って思います。
明日から「海の学習」(学校の行事?です)というものがあって、
1泊2日で海にとまりに行きます!
読むのは後になりますけど、教えてください!
おねがいします!(>人<)
海人 (2004/10/13(Wed) 16:51:18)
しゃへいぶつ 【遮蔽物】 おおい隠しているもの。
オレも調べて読んだよ(笑)
海の学習って何じゃらほい?
林間学校みたいなモノかな?^^
し〜♪ちゃん、いってらっしゃ〜い。
むた (2004/10/13(Wed) 17:32:41)
シティハンターでやってたのか。知りませんでした。一応説明すると、私がヒントを得たのは連載中の漫画「バトルロワイアル」で川田章吾がショットガンを桐山和雄に撃ったのに、防弾チョッキで弾が体内に止まるシーンと「ゴッドハンド輝」で四宮先生が尊流君が自分の手をピアノのふたではさもうとするのを庇って手を出すシーンを元にしてこの問題を作成しました。
まあ、ともかく自分の手を遮蔽物にして撃ったと言うのが正解です。
イメージとしては、右腕の脇をしめて、ひじを曲げて銃を大体右胸の前に構える。で、このとき左手の手のひらを銃口に押し付けて撃った状態を想像すれば太ももを撃つより自然な態勢で撃てるし、真正面の至近距離の相手なら天才でなくても当てることは可能と判断しました。
それからキョウさんの答えは笑いました。確かに青くなるかもしれませんが、泣くのは警部ではなくてむた刑事ですな、その場合。
皆様解答ありがとうございました。
※ 問題中に使用されている人名、地域名、会社名、組織名、製品名、イベントなどは架空のものであり、実在に存在するものを示すものではありません。