コンデンスミルク
むた (2005/05/08(Sun) 12:50:19)
「僕の腕くらいの細く弱い木だから
紙とか家とかに生まれ変われないのさ♪」
(伊藤サチコ「さようなら、木」より)
第1章
女性が金切り声を上げた。そして部屋に駆け込んでくた。
「教祖様、ポール様が!」
教祖と呼ばれた男〜チャールズは幹部たちとポールの部屋に行く。そこには首にダガーが突き刺さり、おなかのところで両手を組んだポールの死体がある。
あまりのことに呆然と顔を見合わせる幹部たちを横目に教祖は言った。
「早く警察を呼びなさい。」
言われた発見者の女性〜シンディは警察を呼びに出ていった。
第2章
死体の前で私は教祖に聞いた。
「よく、お呼びになりましたねー。」
「ええ、お恥ずかしい話ですが、幹部たちの間に反対が多かったのは事実です。・・・しかし、わが教団の中に人殺しがいては『楽園』の平和は保てません。私はそんな事態を認めるわけにはいきません。それでむた・・・さんといいましたか?これは殺人ですか?」
私は教祖のせっかちさと一方的な物言いに苦笑する。まあよくしゃべるものだ。
「そうすぐに結論は出せませんが、かかわりを持つものがいるとはいえるでしょうね。見てください。」
ポールの背中は血で真っ赤だ。背中を地面につけて引きずった後が歴然としている。その後の調べはヤグチさんたちに任せることにして私は教祖と話すことにした。
「つまり、ここで死んだのではなく、別のところで死んで、ここに持ってこられたというわけです。最後に彼を見たのはどなたですか?」
「やはり自殺ではないのですな。まあ幹部の娘さんとの結婚決まっていたくらいですからな。ああ、最後か知らないが、夕礼の前に彼に直接あったのは確かだ。片付けなくてはいけないことがあるからといっておった。」
「それで夕礼の直後に死体を見つけたのですね。夕礼の間に死んだのですか・・・夕礼を欠席したのはどなたかわかりますか?」
教祖は点呼係の書類をめくって言った。
「掃除係のシンディ〜私に知らせてくれた女性です〜とポールの愛弟子のデビッド君ですな。」
「お二人に会わせていただけますか?」
教祖は承知した。自分も立ち会うと主張したが・・・。
第3章
デビットは号泣していた。女性にしてもいいようなほっそりした美男子だ。
「ポールさんが亡くなったなんてまだ信じられません。・・・あの人が大好きでした。今でも好きです・・・。」
その泣き声に辟易しながら、私は質問する。
「夕礼に欠席したらしいが何をしていたのかね?」
「僕を疑っているんですか?!・・・すいません、夕礼に出る前に書類を片付けておきたかったんです。部屋にいました。それで一息ついてそこにあるレモン水を飲んだら立ちくらみがしたので横になってました・・・。」
デビッドはレモン水を指差した。私はそれを預かることを承諾させた。
「ポールさんとは、会ったかい?」
「昨日この部屋であいましたが・・・今日は話してません・・・。」
そのとき、ヤグチさんが部屋に入ってきた。
「ちょっといいかな?ポールの服のポケットからこれが出てきたんだが・・・覚えはあるかい?」
それは宝石とメモだ。メモには「宝石を盗んだのは私です。責任を取ります デビッド」と書いてある。
「デビッド!お前が教団の宝石を取ったのか!?」
いきり立つ教祖を抑えて私たちは再度同じことを聞く。
「知りません!僕じゃないです!」
「書いたものを見せてくれるかね?」
彼は自分の日記を私に渡した。とりあえず、調べにまわすことにした。
第4章
シンデイはがっちりした若い娘さんだった。といってもごついというほどではないが。
「今日の話を教えてくれないかな?何か変わったことはなかったかな?」
シンディはうなづくとぼそぼそと答え始めた。
「えと、あの、ちょっとしたことがデビッド様のお部屋に入るときに起こりまして・・・いえ、大変なことになってしまいました。デビッド様が寝ていたのでお起こししないように注意して掃除しまして、それから教祖様にポール様のことをお知らせしました。」
第5章
「やはりデビッドが殺したのでしょうか?」
現場に戻ると教祖が聞いてくる。せっかちなことだ。事件そのものに嫌悪感を感じて早く解決したいのかもしれないが。
「ことは重大ですから、軽々しくは言えません・・・ただ日記の字とメモの字はよく似ていますが別人の字である可能性が高いと思いますよ。」
「どういうことだ?わけがわからんな・・・。デビッドを信じてやりたいのだが・・・あれのことをポールは特別に部屋に呼んで指導していたくらい可愛がっていたから・・・。もしあいつが犯人ならポールが哀れだ・・・。」
教祖は可哀想なくらい取り乱している。そのとき鑑識が報告に来た。
「すいません、ポールの部屋からこれが出てきました。それからレモン水からは睡眠薬が微量に検出できました。」
レースの切れ端だ。
「ハンカチか何かかな?」
「灰の量から見て・・・ドレスかワンピースかと思います・・・。」
なるほど・・・パズルのピースをまとめて結論を出さねば・・・。
「おい、むた、わかったのか?」
「何とか、推論を組み立てることはできそうです・・・。」
次の問いに答えよ
問1:宝石を盗みメモを書いた者は誰か?
問2:ドレス(ワンピース)を着ていたのは誰か?
問3:レモン水に睡眠薬を入れたのは誰か?
問4:死体を移動させたのは誰か?
問5:手がかりを元に夕礼の間にどのように事態が推移したか推論を組み立てよ。
達磨 ◆dmBb7juw (2005/05/08(Sun) 14:19:02)
むたさんこんにちは^^
私なりに何となくストーリーを考えてみました。
1.ポール
2.デビット
3.ポール
4.シンディ
5.
>えと、あの、ちょっとしたことがデビッド様のお部屋に入るときに起こりま
>して・・・いえ、大変なことになってしまいました。デビッド様が寝ていたので
>お起こししないように注意して掃除しまして、
ここがミソと考えて、シンディがデビットの部屋のドアを開けると、そこには
眠らされたデビットにダガーを突き立てようとしているポールが。それを止め
ようとして少しもみ合い、ダガーはポールの首に。大柄なシンディはそのまま
ポールを引きずってポールの部屋まで移し(ポールを掃除し)、教祖を呼んだ。
ポールは男色家で、デビットにドレスを着せては楽しんでいた。
しかし最近二人の仲は壊れ、逆恨みしたポールはドレスを燃やし、デビットに
宝石の罪を着せて自殺に見せかけて殺そうとした。
といった感じで☆
ダガ-というものを初めて知りました。
ここに来る方って、物知りな方が多いですよね^^
<気になったので編集>
タイトルのコンデンスミルクって・・?
私も好きですが。苺、コーヒー、カキ氷。
むた (2005/05/08(Sun) 16:47:11)
うげげ。あっという間に正解だー(ドゥドゥワー)♪一箇所だけ違いますが。
ポールとデビッドの仲は壊れていません。ポールが結婚が決まったのでデビッドが邪魔になったのが真相ですが、すばらしいです。
「コンデンスミルク」と題をつけたのは、甘ったるくてべたべたした感じ(特にこぼれたとき)がこの教団やポールとデビッドの関係を象徴しているように感じたからです。
解決編に続きます。^^
TK4 (2005/05/09(Mon) 18:43:45)
お久しぶりなTK4です。
あらら、あっという間に解かれてましたねぇ・・・
残念・・・
次回に期待で!
むた (2005/05/09(Mon) 20:40:17)
これこれ・・・解決編を下書きしてるんだから(^^;
もう少し待ってね。では(^^)ノ
むた (2005/05/09(Mon) 22:51:10)
「嫌いになって下さい 君の事が大事だから♪」
(伊藤サチコ「嫌いになって下さい」より)
第1章
「どういうことなんだ?犯人は誰なんだ?」
教祖はきょとんとした顔で言う。この善良な男には事の真相は手に余るものだろう。
「犯人はいません。そもそもこれは殺人でさえない・・・。」
そのとき外からざわめきの声がした。
「どうしたんだ!?」
部屋に駆け込んでくる信者に問いただすと彼は口をパクパクさせながら言った。
「デビッドが・・・・首にダガーを突きつけて・・・・死ぬ気です!」
私はあわてて飛び出す。首にダガーをつきたてるデビッドを周りを囲んだ信者たちが口々に叫びながら止めようとしている。私は人垣を利用して彼の後ろに回りこむ。
「死なせてください!」
「馬鹿な真似はやめろ!」「ショックなのはわかるがダガーをおろせ!」
私は彼の背後に回ると後ろから飛びついた。
「!」
驚いたデビッドはじたばたと暴れる。細い体なのにすごい力だ。半狂乱なのだろう。
「死なせてください!あの人に嫌われたんです!生きていてもしょうがない!」
「やめろ、バカ。落ち着けって。」
私たちがもみ合うのを信者たちが遠巻きにしてみている。そのときだ。
「いい加減にしなさい!」
一人の女性の声が、あたりに鋭く突き刺さる。その声の主を見て私は呆然とする。私が質問した時のあのおどおどした女性と同一人物とは思えない。
「甘えるのもいい加減にしなさい。みなさんに迷惑かけて恥ずかしいとは思わないの?」
シンディが毅然とした声をあたりに響かせる。周囲の信者たちはその声に沈黙を強いられる。デビッドは泣きじゃくったが暴れるのをやめ、私たちは彼を部屋に連れて行くのに成功した。
第2章
「すいません、私がもっと早く言っていればこんな騒ぎにはならなかったのですが・・・。罪は償います。」
「お前が殺したのか?シンディ?」
教祖の質問に対して私は答えた。
「違いますよ。順を追って説明します。ポールとデビッドはまあ恋仲だったんです。おそらく部屋でドレスを着せて個人指導に及んでいたんだと思います。」
教祖の呆然とした顔。無理もない。結婚は許してもこういう事態は想像することもできないのだろう。
「でも、ポールは幹部の娘さんとの結婚が決まった。デビッドとの仲はスキャンダル以外の何者でもないということになります。そこで彼に罪を着せるために宝石を盗んで遺書を偽造したんです。」
「僕は結婚を壊すつもりなんかなかったんです・・・。」
「信じられなかったのさ。そして前日に君の飲み物に睡眠薬を入れた。殺害後は捨てて取り替えるつもりだったのだろうな。」
教祖はようやく、事態を飲み込みつつあるようだ。
「そして夕礼の間にダガーで刺そうと部屋に入った。ところがいざことに及ぼうとしたらシンディさんが入ってきたんです。」
「なるほど、シンディはデビッドを助けるためにもみ合うか何かしてるうちにダガーが首に刺さったというわけか。」
「その後、デビッド君に疑いがかからなくするために部屋から引きずってポールの部屋に移したんです。この行為は厳密には犯罪になるでしょうが・・・・逮捕するほどのことはないでしょうね。」
ヤグチ先輩が思い出したように口を挟む。
「ダガーにはシンディさんの指紋はついてなかったよ。手袋はいつもつけてるのかい?」
「いいえ。修行の一環なんで手袋をつけるのは許されてません・・・。」
「そうだ。私が保証する。」
教祖もうなづく。どうやら一番悪い奴は天罰をこうむったのであろう。
「まあ、刃物持った男と女がもみ合ったんだし、状況が状況だからおそらく正当防衛が成立するだろうよ。」
私がそういうとヤグチさんが目配せする。私はその意味に気づくと教祖の袖を引いた。
私たちがその後、二人を残して出たことは言うまでもない。あのりりしい女と女々しい男は釣り合わないなと思いながら・・・・。
達磨 ◆dmBb7juw (2005/05/10(Tue) 19:19:00)
むたさんこんばんは。
全体的には正解してとても嬉しいのですが、
中途半端な解答でむたさんを困らせたことでしょう、申し訳ない^^;
けっこうキーポイントですよね、最終的なポールとデビットの関係は。
もうちょっと何度も呼んで熟考してから書くべきでした。反省。
楽しませて頂きました。
次作も楽しみにしています^^
※ 問題中に使用されている人名、地域名、会社名、組織名、製品名、イベントなどは架空のものであり、実在に存在するものを示すものではありません。