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ふらっと (2003/08/21(Thu) 22:29:37)
買ったばかりのサンダルに引っ掛けるようにして履くと、友子はTシャツに下はスポーツウェアというラフな出で立ちでマンションの共同通路へと出た。時期は八月の末。昼間からずっと降り続いている雨は、まだ止む気配を見せない。幾重にも空を覆っている鉛色の雨雲で、まだ夕方の6時をまわったばかりだというのに辺りは既に暗くなっている。冷えた外気がとても心地良い。湿った空気を掻き分けるようにして友子は歩み出た。
「409」と表記されたドアの前まで来ると、友子はピタリと立ち止った。ところどころ塗られたペンキが剥がれ、錆びた部分が露出していたが、それは友子の部屋の扉もにたようなものだ。目線の高さに小さな覗き穴が一つあった。
扉の前で友子は深呼吸と軽い咳払いを数度繰り返すと、意を決してチャイムのボタンを押し込んだ。薄いドアの向こう側から、来客を知らせるチャイムの音が聞こえる。もう後戻りは出来ない。友子はいつ穴から覗かれてもいい様に、上辺を取り繕った。
三十秒ほどの静寂が過ぎた。
きりりと結んだ口元が時間の経つごとに緩んでいく。胸の内に膨らんだ物も同様に、ガスの抜けた風船のように萎んでいく。
「…はい、どちら様?」それは再びチャイムへと伸びかけた友子の指を呼び止めるようなタイミングで、扉の向こうから声が掛けられた。風呂にでも入っていたのか、その声はどこか熱っぽい。友子は自分の間の悪さが恨めしくなった。
「わたし、隣に住んでいる佐藤と云います。…もしかしておフロでしたか?」少しでも第一印象を良くしようと、友子は使い慣れない敬語を駆使する。
「いえ、違うの。それでご用件の方は?」その声もやはり熱っぽい。
「あの、少しで構いませんから。その、お醤油を…」友子の声は上擦っていた。
「お醤油…?」
「はい。ほんの少し…分けて頂けませんか?」
「……」
「近くのコンビニまで買いに行こうかとも思ったんですけど、最近この辺り物騒だから…怖くて」友子は怯えたような表情を作ると、覗き穴から顔を逸らした。
「ああ、例の通り魔事件ね。アレってまだ犯人は捕まってないの? 警察は何をやっているのかしら」
「なんでも目撃者も居ないって話です。警察の方々も苦労してんだと思いますよ」
「…何を作ってるの?」
「肉じゃがです。途中からカレーに献立をシフト出来れば良かったんですけど、醤油を切らしている事を思い出した時にはもう糸コンニャク入れた後だったもので…」友子は恥ずかしそうに顔を赤らめた。
「うん、良いわ。少し待ってて」声は可笑しそうに笑うと、パタパタと奥の方へ下がってしまう。台所まで醤油を取りに行ったのだろう。友子は右手をズボンのポケットの中へと伸ばした。
彼女の先ほどの笑い声と、普段マンションのエントランス・ホールで見かける美しい女の顔がシンクロナイズする。白くて細い指。薄い唇。しなやかに伸びた肢体。
再び足音が近づいてくる。友子は息を小さく吸い込むと、左手でドアのノブを力強く握って鍵が外されるのを待つ。
「聞き忘れていたけど、肉じゃがって200ccもあれば足りるものなのかしら? 普段は料理なんて作らないから分からなくて」友子は左手を静かに離した。鼻から息を吐き出す。
「十分です。本当に有難う御座います」友子はそう云い、ニコリと微笑んで扉の瞳へとお辞儀した。ポケットに突っ込んだ手の平が汗で濡れて、握り締めたモノが逃れるように滑った。…胸が痛い。
「ペットボトルに入れて上げる。あ、水が入ってたヤツだから汚くないから安心して…」
その時、扉のずっと向こうで電話の鳴る音が聞こえた。
「…あ、御免なさい。ちょっと」
「構いません」どうぞ、という仕草で彼女に電話へ出るように勧めた。内心で舌打ちをしながらも、自然に愛想笑いが浮かんだ。
再び一人取り残された友子は、無意識に左手の時計へと視線を移す。家を出て既に15分経っていた。その間ずっと外気に晒されていた友子からは熱が奪われている筈なのに、不思議と身体は熱かった。…気が高ぶっている所為だろう。
それは、友子が昂揚を沈めるように友子が片手を雨中へと伸ばした時だった。
部屋の中からズシンと何か重たい物が倒れる音がした。聞こえた、というよりは肌で感じたと云った方が良い。それ程の質量体の転倒。
吃驚して扉へと一歩近づいた友子の耳に、何かがドタドタと駆ける音が聞こえてきた。それは段々と近くなる。友子は出した足を後ろへと下げた。
ドン、となにか扉にぶつかる音。そして、鍵を開けるガチャガチャという音がした。友子は右手を素早くポケットに差し込むと、右手の触れた硬く冷たいモノを外へ…
絶句。
まさに鬼の如しとはこの事だろう。開いた扉の前に現れた女のソレは…
血走った目。赤鬼のように真っ赤な顔に、仁王のように憤怒した表情を浮かべ、服と髪は乱れ、ソレは荒く息衝いていた。
目の前の光景に呆然とする友子の視界に、女が手に握った何かを振り上げるモーションが映った。
友子は咄嗟に顔を庇うが、胸の辺りに衝撃を受けて尻餅をつく。背中を壁で強か打った。息が、出来ない。握り締めたナイフから手が離れる。
女の手から放たれた何かが胸にぶつかり、嫌な染みがTシャツへ広がった。
カラン
乾いた音をたてて、空のペットボトルがコンクリートの床を跳ねた。
見上げると女が満足そうに此方を見下ろし笑い、静かに扉を閉めるところだった。
閉まる間際に友子の見た女の顔は、エレベータで見かける美しい柏木 恵美のソレだった…
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3、第一発見者、佐藤 友子(19)の証言より
「それで…その日の20時頃に被害者から電話が掛かってきた。この記録であってますか?」
「…はい。最初は怖くて言葉も交わさず切っていたのですが、何度もしつこく掛かってくるので怖くて電話に出てしまいました。そしたら彼女、なにか凄く怯えていたみたいで…如何しても私にお願いしたい事があるから、明日の朝に部屋に来て欲しいと云われました」
「その辺りの事を詳しく話して頂けますか?」
「…最初に夕方の事を謝りたいと云っていました。あの時は熱で自分はどうかしていたと…。彼女、泣いてました。酷く狼狽していて受話器から聞こえる声も聞いてて此方が辛くなるほどで…一人では怖くて外に出ることが出来ないから、わたしに一緒に来て欲しいと…」
「彼女が何に怯えていたのか判りますか?」
「判りません」
「…変ですね。貴女と彼女はそれほど面識がなかったのでしょう? どうして彼女が貴女の部屋の電話番号を知っているのですか?」
「…おそらく私の郵便物に記載された番号を見たんだと思います。時々配達する人が、私と彼女の部屋を間違える事がありました。…私の部屋にも彼女宛の郵便物が届く事がありましたから」
「彼女が面識の無い貴女を頼ってきた理由は?」
「それも…判りません」
「次に遺体を発見したときの状況を、もう一度詳細にお願いします」
「…次の日、日が昇るより早く彼女の部屋を訪れました。何度もチャイムを押して彼女を呼んだのですが、一向に彼女は出て来てくれませんでした。私、凄く嫌な予感がしてドアのノブに手を掛けてみましたんです。そしたら鍵が開いてて…」
「どうして早朝を選んだのですか?」
「彼女の指示でした。…彼女からの電話の後すぐに、ふと部屋のドアの覗き穴から通路を見たんです。そしたら怖そうな男性が彼女の部屋の方から来て、そのままエレベータに乗っていきました」
「この取調べの後、その男の顔について幾つかの質問を別の担当官がお聞きします。男の顔を覚えていて下さい」
「判りました」
「…それで部屋に入ったとき、明かりは消えていましたか?」
「はい。彼女の名前を呼びながら、部屋へと上がりました。部屋の造り自体は同じ筈なのに、置かれた家具の位置が違うせいか少し手間取りました。ようやく部屋の電気を付けると、部屋の中に彼女の姿は在りませんでした」
「それで部屋中を探した貴女は、浴槽にて亡くなっている恵美さんを発見したと」
「…はい」
「彼女からの電話を受けて、貴女がすぐに警察へ相談をしていれば、彼女の命は助かったと思いませんか?」
「…警察には知らせないようにお願いされました」
「では最後に、貴女は如何して彼女の申し出を受けたのですか? 貴女に醤油をかけるような人物です。こういってはなんですが、普通は…」
「彼女に興味がありましたから。自分の身近に住んでいる人物に興味を持つのは、不自然な事とは思いません。それはいけない事ですか?」
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・被害者の死亡推定時刻は17時から22時の間。凶器は部屋にあった包丁で、寝室にて殺害。遺体は何者かによって風呂場へと運ばれ、浴槽にはった水の中に沈められていた。犯人は遺体を氷水に浸けることによって、死亡推定時刻に幅を持たせる事が目的だったらしい。
・身体からは少量の睡眠薬(レンドルミン)と風邪薬(塩酸ブロムヘキシン)の成分が検出された。彼女に薬を処方した医師の話によると、数日前から熱と咽喉の酷い痛みを訴えていたらしい。
・遺体の部屋には特に荒らされた形跡は見られないが、寝室のベッドサイド・テーブルが倒れていた。周囲には割れた水差しが落ちいていた。
・部屋からは扉の鍵が見つからなかった。
その5時間に被害者と接触した人物は以下の4人。
・柏木 香織(20) 被害者の妹
・小堺 聡史(28) 郵便配達員
・佐藤 友子(18) 隣人
・田嶋 博人(32) 被害者の元恋人
・森山 奈々(25) 被害者の友人 (五十音順)
1、柏木 香織の証言より
数日前より風邪をこじらせている事を姉から聞いて、頼まれていた物を持って17:45に部屋を訪問するも被害者が留守であったため、そのまま帰宅。18:45に自宅から、20:00に携帯から電話を入れるも不在。
彼女は18:00に帰宅して、それ以降は家に居た。けれど、20:30〜21:30に近くのコンビニエンスストアへ出掛けた。
2、小堺 聡史の証言より
18:30と20:30に訪問。二つとも郵便小包の配達であったが、二回目は不在。被害者は通販を日頃から利用していて、この人物とは顔なじみだったらしい。二回目の訪問際、部屋に明かりが付いていたので不思議に思ったらしい。
犯行時刻のアリバイは、はっきりとしていない。この日は配達先は留守が多かったそうだ。
4、田嶋 博人の証言より
19:30と22:00に部屋を訪れるも、いずれも被害者との接触はなかった。21:00に携帯より電話するも不在。なお特記すべきは、この人物が被害者の合鍵を所有していたことだろう。しかし、被害者は他人が勝手に自分の部屋へ上がる事を嫌っていた為、彼が合鍵を使うことは事は滅多に無かったそうだ。現在、森山 奈々と交際中。
19:00まで残業していたので、その間のアリバイは確か。
5、森山 奈々の証言より
17:30に被害者と接触。風邪がうつるからとドア越しに会話。被害者は熱のせいで意識が混濁していたのか、会話は不明瞭だったらしい。18:00に携帯から電話。話は田嶋の事になり、口論になり電話を切られる。19:45に自宅からまた電話。不在。
被害者の家を訪れた後にすぐに帰宅。一人で過ごしていたのでアリバイは無し。ただ19:30と20:45に仕事先から自宅に掛かってきた電話には出ている。
注)通信記録より被害者は全て自宅の電話で受けている事がわかっている。しかし、被害者から佐藤 友子の部屋に掛けられた電話は、唯一被害者の携帯から発信されたものだった。なおこの携帯電話はまだ見つかっていない。
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二回目のカキコです<(_ _)>深々
む、ムダに長いッス…(つд`)内容は薄々のペラペラなのに(汗
今回のはお風呂に入ってて思いついたお話です<それで風呂上がって直ぐ書き上げました(執筆時間は一時間チョイ)
前回のリベンジをすべくカキコさせて頂いた次第です(≧∇≦)/リベンジ!
今回の事件は単独犯でお願いします<書いたヤツが抜けてる分、どこかツジツマが合わない部分もあるかもしれません。あったら御免なさい( ̄▽ ̄;
KIU (2003/08/21(Thu) 23:21:02)
人の息遣いが聞こえてきそうな文章ですね。文章力が高くて羨ましいです。
難点は、「せい」や「こちら」などを漢字で表記しているところでしょうか。逆に読みにくいです。あと、「吃驚」が読めません……。
でも読んでて楽しかったです。こういう問題は好きです。
さて。推理をば。
友子の殺意の理由は分かりませんが、とにかく犯人は妹の柏木香織。
17:30 被害者が森山と自宅で会話。
17:45 被害者宅に香織が訪問。被害者は在宅だった。
18:00 被害者宅に友子が訪問。被害者が応対。森山から電話、被害者が応対。
18:15 被害者と森山が口論になり、電話を切る。香織が被害者に『落ち着いて。薬を飲んでもう寝た方がいいわ』とでも言い、風邪薬と睡眠薬を飲ませる。被害者が気絶して倒れる、友子が聞いた『何かが倒れた音』はこれ。香織が被害者のふりをして友子に醤油を浴びせ、友子を追い払う。被害者と二人きりになった香織は、被害者を殺害し、浴槽に氷水を入れ、そこに被害者の死体を入れる。
18:30 香織が浴槽に死体を入れていると、小堺が来る。香織が被害者のふりをして応対。小堺が帰った直後、香織も被害者の携帯電話を持って帰宅。この時、電灯を点けっ放しにしていた。
18:45 香織が自宅から被害者宅に電話。
〜〜〜
20:00 香織が友子に、被害者の携帯電話から、被害者のふりをして電話。この後友子が『怖そうな男性』を目撃しているが、それは田嶋。訪問した相手が留守なら、不機嫌そうな顔をしていても不思議ではない。
〜〜〜
翌朝 被害者を友子が発見。
以上です。どうでしょうか?
むた (2003/08/21(Thu) 23:45:23)
確かに、この中で氷を買って、部屋に入れてもらえそうなのは妹さんのみですね。ほかの人の場合はどうしても被害者が抵抗して部屋は荒れるでしょうし薬を安心して飲めるのも妹さんの前だけでしょうね。
森山さんが証言している会話不明瞭は睡眠薬のせいでしょう。
KIUさん、それは「びっくり」と読みます。
ふらっと (2003/08/22(Fri) 02:05:55)
早速レスを返してくれて有難う御座います。
読んでいて眠くなるような長話でしたから、お休み前には丁度良かったかも…?<嘘です。次からはキチンと要約した文章を書けるように努力します。
送信してから気付いたんだけど、タイトル付けるの忘れてました<うっかりうかり。…済みません。
> 人の息遣いが聞こえてきそうな文章ですね。文章力が高くて羨ましいです。
とんでもないです! 自身の未熟な愚考を稚拙な文章力のもとで著したもの。そのような賛美は勿体のう御座います。…芝居がかっていますが、素直に喜んでいます。普段から褒められ慣れていないので…
> でも読んでて楽しかったです。こういう問題は好きです。
あの。豚はこういうときに木に登るらしいのですが、私は何処に登ったら良いのですか?<そういえば、近くにNTTのタワーが…
> 難点は、「せい」や「こちら」などを漢字で表記しているところでしょうか。逆に読みにくいです。あと、「吃驚」が読めません……。
そういった作法がある事さえ知らなかったので、大変勉強になりました。今後カキコするときは注意します。済みませんでした。<まぁ言い訳をさせて頂くと、こんぴゅーたが勝手に変換したので、私に非は在りません…そんなに賢くないですし。
「吃驚」は むたさんが述べて下さった通りの読み方です<私も読めるけど書けないので安心して下さい(?)。
あと「!」も「びっくり」と読む(変換されるし)らしいです。ホント勉強になります。
では、眠たくなってきたので思考が停止する前に本題の方へ行きましょう。緩やかに思考をシフト〜。
まずはKIU様から。非凡な想像力と推察力をお持ちのようで、そういった才の欠落したワタクシとしまては大変羨ましゅう御座います。…微妙にキャラが変。
KIUさんは柏木 香織犯人説ですね。読ませて頂いて、正直びっくり(早速)しました。これでOKだしても良いかな〜などと不覚にも心が揺れるほどでした。
でも、残念ながら及第点はあげられません。数点だけ得心することの出来ないところが在りました。では、そこのところを見てみましょう。
> 18:15 被害者と森山が口論になり、電話を切る。香織が被害者に『落ち着いて。薬を飲んでもう寝た方がいいわ』とでも言い、風邪薬と睡眠薬を飲ませる。被害者が気絶して倒れる、友子が聞いた『何かが倒れた音』はこれ。
少量しか検出されてはいません。一般に一度に飲んで気絶するほどの量を医師は処方しません。あとレンドルミンは少量で卒倒するほどの作用はない、と私の横でねっころがままリボンを読んでいる医師の卵はそう云ってます。…信用出来んけど。
>香織が被害者のふりをして友子に醤油を浴びせ、友子を追い払う。被害者と二人きりになった香織は、被害者を殺害し、浴槽に氷水を入れ、そこに被害者の死体を入れる。
友子はマンション内で被害者を見て顔を知っています。流石に気付くかと…<『彼女の先ほどの笑い声と、普段マンションのエントランス・ホールで見かける美しい女の顔がシンクロナイズする』
例え似ていたとしても年齢差があるやろーし…あ、被害者の年齢書いてない!<小堺 聡史の一コしたの27歳、とします。本当に済みません。
まぁ、ねぇちゃんが若作りしてるか妹が老けてれば成立しますか…<後者に救い無し(泣)
残念ながら、声も違います。最近の電話の性能がどの程度なのか分かりませんが、それに気付かないほど友子も馬鹿では在りません。<伊達にナイフ持ったまま他人の家を訪れるような危なげなヒトですから。
> 18:30 香織が浴槽に死体を入れていると、小堺が来る。香織が被害者のふりをして応対。
田嶋 博人の証言で書いてますが、二人は顔見知りです。これも上と同じ理由でペケ。…やはり『妹が老けてる説』が有力なのかな。はい、被害者の年齢を書き忘れた私が悪いのです。済みません。
といったところでしょうか? 妹が被害者に似てれば確かに成立します。読み返してみると、やっぱり及第点はあげるべきでしたね。
次に むたさんです。
友達の森山 奈々も元・恋人の田嶋 博人も部屋に上がることは可能かと…<抵抗ある人もいるでしょうが、世の中には風邪などで床に臥すと途端に人恋しく人種も居ます。それが元カレだって構いません! …わたし? どちらかと言うと、風邪になると周囲の健康な人に病をうつしたくなる性質でして…(笑)
Yuko (2003/08/22(Fri) 15:44:04)
KIUさんが緻密な考察をされていたので、これで決まりかな〜と
思っていたのですが。
部屋の中の出来事だけちょっといじらせて下さい。
17:30 森山奈々が訪問。恵美が応対。
↓
17:45 妹・香織が訪問。家に上がる。
↓
18:00 隣人・佐藤友子が醤油を借りに訪問。妹の香織が声だけで応対。
↓
18:15 醤油をペットボトルに入れた所で電話が鳴る。香織が出ようとする。
↓
風邪で寝ていた姉・恵美が受話器を取り、森山奈々と喧嘩。
(もしくは妹の香織が受話器を取り、会話。喧嘩)
↓
森山奈々はつい先ほども自宅に来たため、今、ドアの外にいるのも
彼女に違いない、と恵美は思い込む(思い込まされる?)
妹を突き飛ばしてペットボトルを奪い、ドアに向かう。
(もしくはふらついて自分で転んだか?)
↓
森山奈々に醤油をかけてやった!・・・つもりの恵美。
↓
18:30に郵便小包の応対に出たのは恵美。
この朦朧とした状態が、レンドルミンを飲んでいたせいなのか、
それとも風邪薬を飲むためにレンドルミンを一時中断したことによる
副作用(幻覚など)のせいなのか、定かではありません。
こんな感じで。
KIU (2003/08/22(Fri) 21:27:51)
「吃驚」で「びっくり」と読むのですか。びっくりしました。むたさん、ふらっとさん、ありがとうございます。
Yukoさん、支持して下さってもらっておいてあれですが、香織犯人説から抜けた推理を展開させてもらいます。申し訳ありません。
前回の推理に不備が。田嶋が来たのは20:00じゃなくて22:00だったのですね。まあ、それはそれとして。
声も姿も被害者のふりはできないのですか。となると、被害者が友子に『明朝に来て』と頼むのが、意図が見えないので不自然。
友子の証言が嘘だとすると、辻褄が合う。ということで、友子犯人説。
前提として、被害者は電話では起きないが、呼び鈴を鳴らされると起きる、とする。電話の音量か音域が、あまり耳につかないものだったのでしょう。
で、推理。
18:00 友子が被害者と会う。森山から電話。被害者がぶちきれる。電話を切り、ストレス発散のために物に当たり、それが倒れ、一緒に水差しも割れる(一案: 偶然部屋にあったサンドバッグを殴ると、『熊殺し』の異名をとる右ストレートのあまりの威力にチェーンが切れ、天井から吊るしていたサンドバックが落ち、ついでに水差しが割れた。友子が聞いた音は、打撃音かサンドバッグが落ちた音のどちらか)。物に当たっても気が晴れなかった被害者は、友子に「この醤油顔!」という意味も込めて醤油を浴びせ、満足して部屋の扉を閉めた。友子は一旦帰る。
18:30 被害者宅に小堺が来る。被害者が応対。
18:30〜19:30 被害者宅に友子が訪問。被害者を殺害し、風呂で氷水漬けにする。携帯電話を奪って帰宅。
19:30 被害者宅に田嶋が訪問。死んでるので応対できる訳がない。電気が点いているが、特に気にしない。
20:30 被害者宅に小堺が訪問。死んでるので応対できたらホラー。電気が点いていることが気になる。
20:30〜22:00 電気を点けっ放しだったことに気付き、被害者宅に友子が訪問。電気を消す。
22:00 被害者宅に田嶋が訪問。元カノの自宅に夜に平気で来るような無神経男は、当然電気が消えていることなど気にしない。
翌朝 被害者宅を友子が訪問。
友子の証言は嘘。被害者からの電話など無かったし、怖そうな男の存在もでっちあげ。
以上です。どうでしょうか?
ふらっと (2003/08/24(Sun) 23:55:36)
レスが遅くなって申し訳在りません。少し遅い夏休みを利用した遠出のため、2日ほど家を空けていました。
まずはYukoさん。貴方には何より先に賞賛の言葉を送らせて頂きたいと思います。本当にお見事でした。貴方の持っているひらめき――もしくはインスピレーションとでもいいましょうか――を大変羨ましく思います。
次にYukoさんの推理の根幹となった、KIUさんのイマジネーションの豊かさと論理的思考にも深く脱帽致しました。またそれに加え、わたしのカキコにあった見過ごせぬアポリアに対する適切な指摘。大変勉強になりました。確かに友子が犯人であってもなんら問題無く、寧ろそちらの方がしっくりきます。敢えて友子の視点に読み手を立たせる事によって、彼女の擁護をするような形で推理に取り組んで頂く事が当初の目的でしたが、どうやらまだまだ技術不足でした。判り難かったかもしれませんが、佐藤 友子は通り魔という設定でした。しかし、今件とは何の関係もありません(重要参考人ではありますが)。
では、早々に事件の説明をさせて頂きます。
ここで前もって云っておきたいのですが、犯人はYukoさんのご指摘された犯人とは違いました。<私が用意していた犯人役は友人の森山 奈々で、柏木 香織ではありませんでした。
しかし、間違いではないのです! 彼女でも犯行が可能だった、というだけ。全て私のミスです。その事に関しては深く謝罪を申し上げたく存じます。もう少し柏木 香織のアリバイ(18時以降)を強固なものにすべきでした。たとえば自宅からずっと電話を掛けていたとか…兎に角、アリバイがアリバイ足り得なかった。
では、友人の森山 奈々が起こした事件の全容を時間を整理しながら解説していきます。
17:30 森山 部屋に上がる(氷を持参)。
17:45 妹がやってくるも、居留守を使って追い払う。<被害者からこの後、妹が見舞いに来る事を聞かされた森山は、被害者に薬を飲んで寝室で休むように勧める。被害者が寝室に消えると、室内にあるチャイムに音が鳴らないように細工(電池、プラグ等を抜くだけ)する。同様にして電話も。このときに携帯を手に入れる。
18:00 友子が醤油を借りにやって来る。<しかし、ドア越しに会話していたのは森山。友子は隣人との面識はあったが、会話した事は無かった。だから、被害者の声を演じる森山の声と判断する事が出来なかった。それともう一つだけこの声が被害者のものでない事を証明する証拠が出ている。
> ・身体からは少量の睡眠薬(レンドルミン)と風邪薬(塩酸ブロムヘキシン)の成分が検出された。彼女に薬を処方した医師の話によると、数日前から熱と咽喉の酷い痛みを訴えていたらしい。
友子に応対した『声』は長々と話している。しかし、被害者は咽喉に酷い痛みを抱えていのでこれは不自然。塩化ブロムヘキシンとは、出血を伴う炎症等にあてられる薬品である。比較的にポピュラーなもので、市販されている風邪薬にも結構な割合で配合されている。<この時点で彼女の『声』を演じる事の出来ない男性容疑者は外れる。注意してみてみると、この日に被害者と会話を交わしたのは森山と友子の二人だけである。
18:15 自分の携帯から電話を掛け、扉から離れる。<これは単なるアリバイ作り。一度目は電話線を繋ぎに扉を離れ、二回目は被害者の姿を友子に見せるために寝室へ向かう。
その後、服を脱いで半裸になり寝室へ赴く。睡眠薬が効いていてグッスリ眠り込んでいる被害者を無理矢理起こす。そして、『変な人がしつこく醤油貸せって表に来てるのよ。だけどお風呂借りてて、こんな格好だから外に出られなくて…悪いんだけどコレを渡してくれない?』とでも云い醤油ペットボトルを押し付け、玄関に向かわせる。<この日は昼からずっと雨が降っていたため、雨に濡れたから借りたとでも被害者には言えばなんら不自然ではない。
このとき被害者は薬の効果も抜け切らず、感情が昂揚していたと想像される。しかも表には不審な人物、深い眠りから無理矢理起こされ、頭は熱で朦朧とし、咽喉は声が出せないほどの痛みがあって、そして右手には醤油の入ったペットボトル… 被害者の心中は慮らずとも容易に見えてきます。
被害者が部屋から出たのを見計らって、ベッドサイドテーブルを倒す。まるで人が倒れたような音がする。これは万が一、被害者との入れ替わりのトリックがバレたときに容疑を妹へ向けるため。この時間にアリバイの無い『女性の声』を持った妹に…
引き返してきた被害者には『ちょっと眩暈がして倒れちゃった。…水差し割って御免なさい』とでも弁解すれば問題無い。
18:30 醤油事変からすぐ15分後に郵便配達人がやって来る。覗き穴から配達人である事を確認した森山は被害者に応対を頼んで風呂場へ。<サインするだけだから声を出す必要は無かった。
そして、サインを終えて寝室へ戻ったところを殺害。事後処理を行い部屋を出る。このとき部屋の鍵を使って扉に鍵を掛ける。これは合鍵を持った田嶋 博人に容疑を向けるため。また発見が早まるように電気をつけたままにしておく。
18:45 妹から電話。不在。
19:30 田嶋が訪問。不在。(森山は19:30に自宅へ掛かってきた電話に応対)
20:00 妹から電話。不在。30分も待ち惚けを食らわされた田嶋の仏頂面を友子が視認。(被害者を装い友子へ携帯から電話。被害者の声と友子の声を混同しているので疑い無く信じる)
20:30 宅配人が再び
(森山は20:45に自宅へ掛かってきた電話に対応)
21:00 田嶋から電話。不在。
22:00 田嶋が二度目の訪問。長時間外で待たされた田嶋は苛立ち、合鍵を使って部屋へ侵入。遺体発見。慌てた田嶋は電気を消して表に飛び出す。そして扉の鍵を掛けてようとして、この状況下では自分に容疑が向く事を危ぶみ、敢えて施錠をせずに立ち去る。
明朝、佐藤 友子が遺体を発見。
_________________________________
また暇を見てカキコさせて頂きます(・ー・)ノ ウイウイ
Yuko (2003/08/25(Mon) 01:56:13)
◎ふらっとさん。
そうか。この日、被害者とまともにしゃべったのが森山だけ、
被害者は風邪で薬を服用していた、ということがポイント
だったのですね。そこまで考えが至りませんでした。
なるほど〜と膝を打つ思いです。
森山と被害者が口論した、というのもフェイクで、
仲が悪い→家には上がらない
というイメージを抱かせるのにも好都合ですよね。
私もすぽっとはまってしまいました。
はずれた推理でしたのに、お気遣い戴いてありがとうございました。
面白かったです〜。
また機会がありましたらよろしくお願いします。
◎KIUさん。
便乗させていただいてすみませんでした。
ありがとうございましたー。
KIU (2003/08/25(Mon) 09:13:22)
ふらっとさん
ははぁ、なるほど。そういうことだったんですね。友子の殺意も『通り魔だった』ということを聞き、「ああっ、なるほど!」と納得いたしました。
>KIUさんのイマジネーションの豊かさと論理的思考にも深く脱帽致しました。
いえいえそんな。てんで的外れでしたし。
面白い問題で、とても楽しませていただきました。ありがとうございました。
Yukoさん
>便乗させていただいてすみませんでした。
あ、どうぞどうぞ。けど折角便乗していただいたのに不正解で、こちらこそすいませんでした。
それでは。
※ 問題中に使用されている人名、地域名、会社名、組織名、製品名、イベントなどは架空のものであり、実在に存在するものを示すものではありません。