それでも僕は両目を開ける
むた (2005/07/16(Sat) 09:06:52)
「税理士法第1条 税理士は、税務に関する専門家として、独立した公正な立場において、申告納税制度の理念にそつて、納税義務者の信頼にこたえ、租税に関する法令に規定された納税義務の適正な実現を図ることを使命とする。」
第1章
ありうべからざることであった。彼にとっては天国から地獄に落とされた気分であったろう。盲点をつかれたというべきか、予想しておくのが当然だったというべきか。誰がなんと言おうが、社長である彼〜ワタナベミチオの秘書ササハラトモコが妊娠したこと、その父親が自分であることは明白だった。そして彼女が自分の妻でないことも。最初は堕胎を進めた。だが、彼女は頑として首を横に振った。
「この子は産みます。一つだけお願いがあります。認知してください。それ以外に私は要求しません。したくありません。」
普段従順な彼女のうって変わった変貌振りであった。要求が正当であるだけに彼は追い詰められていく気分だったのだろう。彼はある日無理がたたって意識不明で倒れ、入院したのであった。
第2章
病院のベッドの上で意識を取り戻した彼は一大決心をした。彼は顧問税理士であるイワを呼んで、遺言状を作ることを決めたのである。
「無理はしないほうが・・・。」
止めるイワを振り切るように彼は財産分与の件、事業承継の件について相談し、自らの手で遺言書をしたためていった。そして書き終わった後で彼はたっての頼みでイワに一行追加する事項を述べた。
「ササハラトモコのおなかの子供を死後認知すること。」
執念とも言うべきその姿に、イワは打ちのめされるような気分であった。ともかくも約束を守ることを彼は承諾したのであった。
第3章
それから3日後、彼は亡くなった。それから葬儀やら49日やらを手伝ったり出席したりしてあわただしい日々を送りながらも、何とか遺言書を家庭裁判所に提出して検認を受けた。イワはワタナベ社長の遺族を呼んだ。あの件の秘書トモコも呼び寄せた。順々に読み上げていく彼。読み終わったとき、社長の妻が発言した。
「こちらにも遺書があります。」
彼女が懐から出した遺書。裁判所の検印も押されている。呆然とするイワ先生の前にで彼女は遺書を開封した。
そこには、「全財産を正妻ユミとその一人息子タカシにおのおの半分ずつ譲る」
とあった。日付は彼女が持っている遺言書のほうが新しかった。様態が急変したのはこの遺言書を彼女が無理に書かせたためかもしれない。
「ですから、認知はいたしません。遺言書は日付が後のほうが有効のはずです。」
彼女はきっぱりと言い放った。ユミはこの瞬間を待っていたのかもしれない。息子のタカシも初めて聞いたらしく呆然としている。そしてトモコは・・・声もなく泣きじゃくる。
イワは息を整えると気持ちを落ち着けた。そして言った。
「奥さん気持ちはわかります。お辛いでしょう。ですが、奥さんはミスをされました・・・。認知は出来ます・・・。」
問題:奥さんがしたミスはさてなんであろう?
かむ (2005/07/16(Sat) 12:04:07)
おはようございます。
気になったのが、財産や事業まわりの事項は自分で書いたとあるのに
認知の件に関しては、イワさんに書かせたような描写になってますよね?
そしてうちのめされたと。。。ということは
ササハラトモコさんのお腹の子の父親はイワさんだった!
そう思って読んでみてもなんか通じる気がするのは私だけでしょうか?w
ということで奥さんのミスは
「最後の一行はイワさんへの指示だったのに、勘違いしちゃったこと」
え〜最初に気付いたのは下記内容なんですけど、
「仮にササハラトモコさんを認知した場合は「妾」と呼ぶのでしょうか?」
むた (2005/07/16(Sat) 12:17:57)
かむさん回答どうもです。用件はそなえていると考えてください。文章下手なのはともかくとして。
衝撃を受けたのは、まあ三日後に死ぬぐらいだから息も絶え絶えに最後の一文を書き加えたことを見てショックを受けていたということです。イワ先生はまじめな人なので女性関係は身奇麗です。きっとこういう事例を勉強してるからでしょうか。
ヒントは二つの遺言書を並べてみましょう、です。では(^^)ノ
線分ft (2005/07/16(Sat) 12:51:43)
2005/07/16(Sat) 12:58:35 編集(投稿者)
2005/07/16(Sat) 12:54:14 編集(投稿者)
こんばんは
日本で土葬は禁止されていないのですね……線分ftです。
(まぁ、どっちにしても火葬の方が多いでしょうが……)
さて
>「こちらにも遺書があります。」
> 彼女が懐から出した遺書。裁判所の検印も押されている。呆然とするイワ先生の前にで彼女は遺書を開封した。
奥さんの方は「遺書」だから
……と、いう事は実は自殺だったのか?^^;
遺言状って相続人が開封したりして良かったかな……?
書き忘れ。PCが通常と違うのでIDが違いますが、同一人物です。
むた (2005/07/16(Sat) 15:09:03)
相続人が全員そろっている場所でなら誰が開いてもいいです。検印も押されてるし。(奥さんもいつの間にか家庭裁判所に行ってたということです。なかなかしたたかな人です。)
「遺書」は書き間違いです。(^^;
奥さんがしたミスは割とみんなが漠然と間違えてるありふれてるものです。
きちんとした知識がないと恐ろしい結果を生み出すことがあります。
線分ft (2005/07/16(Sat) 15:52:42)
再びこんばんは
♪今から始まる長い1日が争いだけにまみれていても〜。線分ftです。
(中島みゆき「目を開けて最初に君を見たい」……タイトルから)
さて、素人考えの思いつきで数撃ってみます。
・「前遺言を撤回し、ササハラトモコのおなかの子供を認定しない」と
明記されていないので、前遺言が有効だった。
・遺言者名が記されていない。
・誰の「全財産」か記されていない。
・用語の誤りがある。
「遺書」は結構自信があったのですが……残念(笑)
かむ (2005/07/16(Sat) 16:14:08)
こんにちわ
最初に遠回しに書いてたことなんですけど
奥さんのミスは
「”正妻”という言葉を使用した時点で認知したことになる」
(第二夫人を認めてるから、妾に対して正妻という表現が使える?)
だと、思ったんですけど、線分ftさんに先に書かれてますが
前者の遺言では「財産」「事業」「認知」の3種の事柄についてのものだったのに対し
後者の遺言では「財産」にしか触れていないから
「財産」に関しては後者が有効になるが、
他は前者がそのまま有効になるってことなんでしょうか?
ってことで、奥さんのミスは
「遺言で”認知”に関する事柄に触れていなかったこと」
で、ファイナルアンサー♪
refrain (2005/07/16(Sat) 17:23:28)
2005/07/16(Sat) 17:27:58 編集(投稿者)
むたさんこんにちは!
線分ftさんとかむさんの書かれているように妻の遺言には認知について書かれて
いなかったので認知は認められるのは正しいと思いますが補足として一言。
死後認知が認められれば財産分与に対しても遺留分が発生するのでこの問題の
場合は2分の1の6分の1で財産の12分の1はもらえるようになる。
(数字は間違ってるかも)・・・と思います。(^^ゞ
Vega (2005/07/17(Sun) 03:24:52)
こんばんは。
私も他の方と同様、新しい遺言状に認知の否定をする記述がないことかなぁと思うのですが、あえて別路線を行ってみます。
法律には全く疎いので想像ですが、
遺言に書かれたことの執行は、遺言が正式な場で読まれた時点でなされるので、書かれた日付が新しくても、先に読み上げられた遺言の方が有効
というのはどうでしょう?
むた (2005/07/17(Sun) 11:26:46)
お見事です。線分ftさん、かむさん。そうなんです。新しい遺言書を書いたからといって、前の遺言書が全て白紙になるわけではなく、あくまで書かれた部分について有効になるだけなのです。
で、子供さんである以上、遺留分が発生するのも正解です。これは本人かその親権者が主張すれば、意見が通ります。
Vegaさん、残念ですが遺言書は通常は新しい日付のほうが有効になります。ここに注目する場合はイワ先生にこの遺言書を裁判所に持っていくことを許したのがミスということになります。ここで使われているのは、自筆証書遺言といいまして、本人の自筆で全ての遺言書を書き、名前と日付、印鑑が特定できればよいというものです。これには証人も必要ないですが、封をした遺言書を裁判所で検認を受け全相続人の前で開封することによって正式なものと執行されます。だから別解としてはイワ先生が預かっている遺言書を彼女が裁判所に提出することを阻止できていたら今回の認知を阻止することが出来た可能性があります。
では解答編です。
むた (2005/07/17(Sun) 11:43:57)
イワは搾り出すように言う。
「・・・奥さんに遺言書はあくまで財産分与に関してしか示していません。」
そして彼は続ける。前の遺言書に書かれて次の遺言書に触れられてない部分、事業承継や認知の部分については前の遺言書が有効であること、おなかの子供は認知により相続権6分の1及び遺留分12分の1が発生すること・・・。
「先生、あなたはどちらの味方なのですか!」
奥さんの金切り声がイワに浴びせかかる。彼女にしてみれば依頼する顧問税理士に裏切られた気分であろう。
「申し訳ありません・・・、ですが他からこのことを知った彼女が裁判所に申し立てをしてはかえってことが公になり故人やご家族に泥を塗ることになると思われますので・・・。」
「泥とはなんです!」
そのとき、それまで黙っていたタカシが口を開く。
「先生、謝ることはないです。後で知るより今教えていただけたほうがいいのは確かですから・・・。」
タカシは言葉を選びながら言葉を続ける。
「母さん、怒る気持ちはわかるよ。僕だってこんな事態腹ただしい。でもこれ以上先生を苦しめるのはやめよう。・・・それからササハラさん、遺留分といいましてもうちは現金財産の問題がありますので、こちらについてはきちんとした形で処理をしたいと思っています。」
「私は認知さえしていただければ、財産までどうこういう気はありません。」
「そうはいきません。私の腹違いとはいえ弟か妹に当たる人がほったらかしというのではそれこそ、我が家の恥になります。あなたのことは嫌いだが、その子に罪はないのですから。」
イワは思った。恋は思案の外というが、軽はずみな行動がどれほど当事者たちの心を傷つけるかを・・・。おなかの子供についての問題についてはまだまだ問題に解決に時間が必要なようだ。
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