くもの糸。パクリじゃないですよ。
むた (2003/06/17(Tue) 15:00:41)
蒼鉛君が「蜘蛛の糸」というなかなか興味深いスレを出していますが、こちらは太宰氏に対抗して芥川氏の「くもの糸」というわけで。
多分結論でにくいと思うけど、あなたがカンダダの立場だったとしたらどんな風に行動したと思いますか。
私は一応、1秒でも早く上に上がると思います。
一応あらすじ
連続殺人強盗犯カンダダは、当然のように死後、血の池地獄で浮き沈みしていた。それを極楽から見ていたお釈迦様が生涯に一度だけくもを助けてあげていたことを思いだし、くもの糸をたらして地獄から救ってあげようとする。カンダダはその糸を上って極楽まで後一歩まで来るが、下からその糸を使って上がってくる亡者たちをみて「これはオレのだ!」と叫ぶ。その瞬間くもの糸が切れ、カンダダたちはまっさかさまにもとの所へ落っこちる。
KIU (2003/06/17(Tue) 16:34:51)
すいません。めちゃくちゃ長くなります。
前置き:以下は自分なりの意見であり、別に他の意見の存在を認めないわけではありません。相容れないかもしれませんが。
他の人達が上がってくるのを見て、糸が重みで切れそうだから一喝したアレですよね? 自分はあの話はおかしいと思うんですよ。
カンダダの主張は正当です。極楽に行く権利があるのはカンダダだけです。それなのにカンダダが何も言わなかったとすると、他の救いようの無い連中が極楽に行くという『不正』を無視したことになります。地獄に落ちた連中はそうなるべき連中な訳ですから、清く正しく生きていた人達と同じ思いをして良い訳が無い。彼等を極楽に連れて行ってはならない。その不正を咎めないことの方が、よっぽど重い罪です。だからカンダダが彼等を非難したことは正当です。それなのにカンダダも地獄に落とされた(結局お釈迦様に落とされたってことでしょ?)。それは何故か。
カンダダは「これは俺のだ!」と言っていました。この独占的な態度がダメだったんでしょうか。そんなことはないと思います。あの糸を使っていいのはカンダダだけです。カンダダだけが使うのが正当です。他の人が使ってはダメです。それなのに彼等のせいでカンダダが不幸になったとしたらおかしいでしょう。因果応報に背いています。だからカンダダの主張はやはり正当です。
付いてくるのを見過ごすのは当然罪。付いてくるのを非難するのも、芥川的には罪。ではどうすればいいんでしょう? 独占的な態度がダメだとすれば、「お前達はダメだ」とでも言うべきなんでしょうか。いいえ、本来ならカンダダは何も言わずに済んだはずなんです。それなのに彼は何かを言わざるを得ない状況にさせられたのです。他ならぬ、お釈迦様に。
糸を上がっている最中、カンダダは下を向いてはいなかった。だから下に群がってくる罪人達に気付かなかった。その後、糸が切れそうなことに気付き、下から糸を伝って上がってくる連中を見つけ、不安になって「俺のだ!」と叫んだんです。で、糸を切られた。さて、カンダダが叫んだのは不安になったからです。彼が不安になった責任はお釈迦様にあります。お釈迦様は何かをするべきだった。他の連中を怒るなり、糸に罪人達が集まるのを見た時点で(全てを見通せるんでしょ?)、カンダダが連中に気付く前にカンダダより下の部分の糸を切るなり、カンダダに「下から色々と付いてきてるけど、お前が登りきったら糸を切って彼等を落とすから」と言うなり、「糸は頑丈だから大丈夫」と言うなり。とにかくカンダダが不安になる前に、何かをするべきだったんですよ。
助けようとしてたくせに、大事なところで何もしないで、どう対応するかはカンダダに任せた。これは明らかに責任を果たさなかったという罪でしょう。カンダダは下の連中を無視しても非難しても罪になってしまうんです。お釈迦様である以上、その必然性は当然分かっていたでしょう。だというのに、肝心な場面で責任を果たさず、何を選択しても罪になってしまうカンダダに選択させ、その罰として糸を切った。なんだこれは? どこまで独善的なんだ。て言うかね、結局のところ、奴はハナっからカンダダを助けてやるつもりなんてなかったってことですよ。助けようとした人間の醜さを確認し、悲劇のヒロインぶりたかっただけなんですよ。
結論
自分も「これは俺のだ!」と叫びます。それで落とされたら「お前も落ちろ!」と叫びます。
スマイリ− (2003/06/17(Tue) 16:53:31)
「めちゃくちゃ急いで上がり、上まで行ったら糸を切る」
きっとこんな事が出来ない設定なんでしょうけど。
沢庵 (2003/06/17(Tue) 17:34:05)
お釈迦様を信じて一心不乱に登りきります。
大分前に読んだきりなので、記憶が不確かかもしれませんが・・・
たぶん、下から登ってきた(ように見えた?)人達、そして切れそうになった(ように見えた?)糸はお釈迦様の作った幻影で、お釈迦様は、「助けてやる」と言うお釈迦様の行動を信じれるか、カンダタの信心深さを試したのではないでしょうか。
ほとんどの宗教は他宗派には厳しいですよね。
(ちなみに私は無宗派だす)
サージョ (2003/06/17(Tue) 17:15:05)
KIUさん凄い!数ある芥川の作品の中で最も有名な中の一つである
「蜘蛛の糸」におけるストーリーの矛盾性をしっかりと指摘されましたね!カッコイイ!
私の意見ですが、
これはヒューマニズムを描いた作品でありましょう。
これは完全にお釈迦様の独り善がりであります。
そもそもカンダタに助けを与えた理由は彼が生前の善行をした見返りなのです
そして糸をたらした。
しかし、この糸が一本しかなかったところに落ち度があったのではないでしょうか。
そして、お釈迦様は、その糸をたらす事によって他の罪人達がやってくるのを予測できた
はずです。もしその時点でカンダタが何も言わなければ罪人たちが全て天国へやってくる
ではありませんか!そうなると地獄はたちまち営業不振に陥り自己破産となってしまう
のです!
お釈迦様は、罪深き罪人を救う事により極楽のイメージアップをはかろうとしたのです。
しかし、それは閻魔様への営業妨害にすぎないのです!
これは公務執行妨害として御釈迦様は訴えられても仕方が無いのであります!
多分御釈迦様は、カンダタが他の罪人も許すという行為が、善行だと考えたのでしょう。
しかし。
前科何十犯もあって何百人もの罪無き人々を惨殺した人に、誰が救いの手を差し伸べます
かね!?
そんな糠喜びをさせるなら最初からカンダタを救わなければいいのです。
あるいは、御釈迦様は単なる遊びで糸をたらしたのかもしれません。
だとしたら全く自己中心的利己的な考えであります!
だいたい、カンダタは、閻魔様が営業不振に陥ってしまい多数の鬼達がリストラされ
ることが可哀相で、お客(罪人)を地獄に戻そうとしたのなら御釈迦様は最低です。
まあ、今回カンダタがおちたのは、「来るな」といったのが、自分の為だったからです。
この「来るな」の意味がKIUさんのいったような意味ならばおしゃか様も助けたで
しょうが。カンダタの心を見透かしたんでしょうね。
結局こういう結論に落ち着きました。
KIU (2003/06/17(Tue) 19:13:51)
サージョさん
>KIUさん凄い!
>カッコイイ!
マジで照れるって! マジで照れるって!!
…………あ、失礼。無視して下さって結構です。
自分としては、沢庵さんの意見は芥川先生より真理を捉えていると思います。思わず納得してしまいました。
蒼鉛 (2003/06/17(Tue) 19:31:32)
本家の(違)蒼鉛です
私だったら……何も言わずに自分の下の糸を切りますね
とどのつまり、我が身が一番可愛いので……
(絶対にお釈迦様に蜘蛛の糸垂らしてもらえませんね^^;)
ところで、お釈迦様が自己中心的であるというのはちょっと違う気がします
私も良くは知りませんが仏教と言うのは他の宗教とは少々違い
「救済」を求めるのではなく
「解脱」つまり俗から離れ悟りに至る事を目標としているらしいです
すると、お釈迦様はカンダダが少しでも俗心を捨てようとしているか試したもので
カンダダが叫んだ事によりカンダダの心に未だ「俗」があると見て
糸を切ったのでは無いでしょうか
……で、間違えていたら恥ずかしいなぁ^^;
個人的には蜘蛛一匹助けただけで地獄の責め苦を免れ得る点が納得いかないのですが……
KIU (2003/06/17(Tue) 20:01:25)
>仏教と言うのは他の宗教とは少々違い「救済」を求めるのではなく
>「解脱」つまり俗から離れ悟りに至る事を目標としているらしいです
なるほど。深いなあ。自分とは違う物差しで世の理を計っているわけですね。
むた (2003/06/17(Tue) 22:51:50)
いろいろ読み方あって面白いですね。僕は単純に、最初お釈迦さんは意地が悪いなー、と思ったくらいですね。
で最近、自分はこの話は、受験(特に税理士試験)のときの自分を重ねてしまいます。あのくもの糸は、己の執念というか、根性のような気がしてならんです。
あのとき、周りを見て比較したり、相手を蹴落とそうとしていたやつは、多くが不合格になり、ひたすら前を見ていたやつが勝っている・・・・。そう思って読み直すと、カンダダが叫ぶシーンは自分の一番醜い部分を見るような気がして目を伏せたくなってしまいます。
みんなと読み方違いますけど、こう読むのもありということで、述べてみました。
ロッキー (2003/06/18(Wed) 03:10:09)
懐かしい話です。
>あなたがカンダダの立場だったとしたらどんな風に行動したと思いますか。
これに対しては「これはオレのだ」と一喝します。
このお話の筋書き自体については
・まず蜘蛛1匹と人間数十人の命がつりあうところに疑問を感じる
いくら蜘蛛を「殺さなかった」という「悪行を働かなかった」からといっても、
そして生き物の命の重さは同じといっても、
あまりにも差がありすぎ天秤に掛けたとき救ってやるほどのことかと疑問を感じます。
・「これはオレのものだ」の前後に「こら、罪人ども」
「おまえたちは一体誰に尋いて、登って来た。下りろ、下りろ」のくだりがあり、
その途端今まで何ともなかった蜘蛛の糸がぷつりと切れたのだから、
そのまま行けば助かったのにその傲慢な態度、
自分を棚に上げて自分だけ助かろうとするその姿勢があさましく、
天国の住人にふさわしくないと判断された。
芥川的には他の罪人を地獄から抜け出させようとするのも「美徳」だったのかもしれません。
ゲームブックじゃないから選択できないけど、もしそのまま進んでいたら、
勝手にお釈迦様の方でカンダタの下方の糸を切ったとかカンダタをワープさせたとか。なはは。
むた (2003/06/19(Thu) 08:17:46)
みんなの意見も出尽くしたようなので済にしますか。
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